ある男の良心の呵責

同時刻、 マナ法国でファウンデーション教国に移動中の【アポビオーシス】。


専用皿と行軍する部隊達の士気は非常に高い、 何しろ自分達は世界最強のスシブレードを


運用しているのだ、 心躍らない筈が無い、 闇寿司にとって


スシブレードによる世界征服は悲願と言って良い。


浮かれているとも言って良い、 だがしかしそんな陽気に関わらず暗い顔の男が居る。




彼の名はグラニート。


スシブレーダーでは無い、 彼はバリゾーゴンの配下のサイクロプスであり


【アポビオーシス】射出の為のサイクロプス、 ジャイアント混成部隊の指揮官である。


彼の号令で【アポビオーシス】は射出され壊滅的な破壊を齎すのだ。




グラニートは歴戦の強者、 人間を相手の戦争は経験して来た。


そんな彼が20万の人々を虐殺した事実に対して圧倒的に慚愧の念を感じていた。


自分が今まで戦って来た者は敵対者、 戦人、 しかし自分が虐殺した20万人は


敵対していたが無辜の人々が殆どだった。


人間を幾ら殺しても魔族は気にも留めないと思う読者も居るだろう。


しかし魔族にも心が有り、 ダークネスシ帝国に与している以上人間とも接する。


彼等が人間に思う所が出来るのも無理は無いだろう!!


だがしかしグラニートは自分の想いを誰にも打ち明けずに居た。


何故なら




「グラニート、 この前は大手柄だったな!!」


「これからもよろしく!!」


「いやぁ凄いな本当に尊敬するよ!!」


「羨ましいなぁ・・・」


「グラニート!! 一杯呑もうぜ!!」


「隊長、 御疲れ様でした!!」




自分以外、 誰も虐殺を忌むべき事と認識していないのだ。


いや気持ちが沈んでいる者も居る、 しかし口には出さない、 圧倒的な少数派だからだ!!




「・・・・・」




グラニートは静かに一人外れた場所で強い酒を煽る様になっていた、 しかし酔えない。


グラニートは激しい良心の呵責に苦しんだ、 自分が二十万の人々を死に至らしめたのだ


自らを史上最大の殺戮者として見るようになり


もしこの戦争でファウンデーション教国が勝利すれば


自分は戦争犯罪者として裁かれ処刑されるだろうと考えていた。




この時点で自分が負ける事を考え始めていた、 望んでいたのかもしれないが・・・


何れにせよ、 彼は更なる惨劇を起こさなければいけない自分の境遇に悲嘆した。


今度は20万では済まない人々が虐殺されるのだろう、 彼は一つしか無い目から


涙を流しながら酒を煽った、 酒は琥珀色に輝いていたがグラニートには赤色に見えた。


そして血の味がしたのだった。

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