嘘吐きの揺り籠

タオに連れられてとある建物にやって来た一行。


「ここは?」

「ここは刑務所だよ」


辺境伯領には国最大の刑務所が有る。


「何故刑務所に?」

「ここにとある秘宝が有るのだ、 レーア伯爵令嬢の所にも沢山有るだろう」

「・・・噂には聞いていましたが実際に見た事は有りません、 伝説では?」

「私も君位の歳にはそう思っていた、 実際に見ると全く変わるよ」


そう言ってタオは刑務所の一角にある石炉の所にやって来た。


「これは?」

「これが先程言った秘宝だよ」

「これが・・・ですか?」

「ただの石の炉に見えるが・・・」

「これが何だと言うんだ?」

「ふむ、 実はマオは今人間不信になっていてね

ジューンの裏切りが相当応えたらしい」

「・・・・・」


マオはそっぽを向く。


「ジューンの裏切りが・・・」

「私は今でも信じられません、 ジューンが裏切るだなんて・・・」

「私もだ、 良い子だったと思ったのにな、 残念でならない」


タオが俯く。


「そこでだ、 君達が裏切らないと言う証明が欲しい」

「裏切らない証明? そんなのある訳無いだろう」


ゴハンが悪態を吐く。


「確かにこれが私の信念です、 って物的に見せられる物じゃありません」

「そこでこの石炉だ」

「?」


首を傾げる三人。


「この石炉は嘘吐きの揺り籠と呼ばれる物でな

この石炉に入って真実でない事柄を言うと、 焼け死ぬと言う物なんだ」

「真実でない事柄?」

「そう、 例えば『明日雨が降る』とか」

「・・・未来を予知出来るのですか?」

「そうだな、 これを使えば将来的に君達が裏切るか否かを判断する事が出来る」

「ちょい待ち爺さん」

「爺さん!?」


ゴハンの物言いに驚くハウ。


「無礼な・・・!!」


マオが弓矢を構える。


「無礼はそっちだろ、 裏切るかもしれないからこの良く分からん炉の中に入れと?

失礼過ぎるだろうが」

「御尤もな話だがね・・・ウチの孫娘が納得しないのよ」

「お孫さんを甘やかしすぎないか?」

「慕って居た兄を亡くしたんだ、 察してあげてくれ」

「それは虫が良過ぎるぜ、 俺等には関係の無い事だ」

「関係が無いだと!?」

「ジューンの裏切りを見抜けなかったって言うのはいちゃもんだろ」

「貴様ッ!!」

「そもそもだ、 アンタ達はこれを使ったのか?」


ゴハンが畳みかける。


「・・・如何いう意味かな?」


タオが静かに尋ねる。


「いや、 裏切るのが分かるのならばアンタ等はこれを使って確かめたのか?

『アンタの事が信用ならないんでこの嘘吐きを焼き殺す炉で確かめさせて下さい』って言ったのか?」


当然ながら言える訳が無い、 そんな事したら信用が無くなるのだ。


「それは確かめたよ」

「正気かよ、 信頼関係ぶっ壊れるじゃねぇか」

「儂がこの中に入って『辺境伯に仕えている騎士達は将来裏切る者は居ない』と言った」

「・・・正気かよ」

「彼等が裏切ったら儂は終わりじゃなからな、 遅いか早いかの違いよ」

「・・・・・分かりました、 入りましょう」


バルトが一歩前に出る。


「おい、 バルト、 正気かよ」

「タオ様とマオ様の信用が手に入るなら容易い事です

それに信用して貰うのは厳しいと思っていましたし、 お膳立てを立ててくれたんです

寧ろ感謝するべきでしょう」

「信用して貰うのが難しいとは如何いう意味かの?」

「・・・・・」


バルトはエッグヴィーナスを回して見せた。


「これは・・・スシブレード・・・初めて見た」

「一体どうやっている!?」

「禁じられた山で知った知識です、 敵方と根源は同じ力を使っている訳です

信用して貰えるのは難しいかなと思っていました」

「う、 うむ、 ならばこの炉で信を確かめよう」

「そうしましょう」


そう言って炉の中に入るバルト。




登場したSCP

SCP-2128 - 嘘吐きの揺り籠

http://scp-jp.wikidot.com/scp-2128

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