果たせお約束
どうせピクリとも動かないんだ。
溜まったストレス解消の為にもここは思いっきりー
押す!
ドォーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
押した途端、アーダルベルトが吹っ飛んだ。そのまま後ろで面白そうに見物していた兵士達を巻き込んで、硬そうな壁にめり込む。
・・・・・・は?
何が起こったのか、誰にも、俺自身にも解らず、唖然とし、バタリと倒れるアーダルベルトの元に絶叫しながら兵士達が集まった。
「た、隊長。ご無事ですか!?」
「おい、隊長の後ろにいた奴ら、完全に気を失ってるぞ!」
「運ぶなら気をつけろ。骨が折れているかもしれん!」
ブルブルと俺は信じられない思いで自分の手を見た。
その手は紛れもなく俺の手で、筋肉がいきなり膨張したとか、そんな特に変わった様子もなく、あんな現象が起こせる訳がないのに。
現実感が湧かない。
だが、ハッとなって俺はアーダルベルトに駆け寄った。
「だ、大丈夫か? 何処か痛むか!?」
「ぐぅ、な、なんとか。鎧のおかげで命拾いしました、な」
「・・・鎧」
鎧は、手を押し付けた辺りが完全に破壊されており、バラバラと床に破片が落ちていた。
こ、これを俺がやったってのか?
未だに信じられずにいたのだが、エリーザには確信があったのだろう。
後ろを振り返り彼女を見ると、意外にも口元に手を当てて顔が蒼白となっていた。
「・・・あれ? こうなると解ってたんですよね?」
「あ、し、失礼しましたわ。いえ、伝説を疑ってはいなかったのですが、まさかこれ程とは思わず、転ばせられれば上々と思っておりまして」
「って、おい待て。これその何十倍の力が出てんだよ! 運が悪けりゃ全員死んでるぞ!」
思わず怒鳴りつけてしまったが、その場が、シンと静まり返り、俺も冷静になった。
「・・・・・・あ」
や、やってしまった。
王女に対してあるまじき暴言。
しかも周りの兵は隊長を倒された事で気が立ってる。
ヤバイヤバイヤバイ! 殺されてしまう。
エリーザがキュッと口を結ぶ。
背筋が総毛だった。
彼女が「無礼者」だの「不敬」だのと叫べば俺の人生は終わる。
一刻も早く謝らなくては。
ヤバイ、口が震えて上手く声が出ない。
それに、これって俺が謝るべきなのか? 確かに声を荒げるべきでもなかったかもしれない。
それに、一歩間違えれば死人が出る所だったんだ。
言うべき事は言わないといけない。
いや、言わないと気が済まない性分なんだ。
例えそれがお姫様であったとしても。
我ながら頭が固いよな。
俺もこのお姫様が頑固とか言っていられない。
とにかく、ここは自分の考えを曲げて一度謝って、
「申し訳ありません!」
「・・・え?」
エリーザの方が謝った。
怒らせた訳じゃないの、か?
「軽率でした。もっとやりようはあったはずなのに。ああ、アーダルベルト、今治癒魔法をかけますから」
動揺はしているのだろうが、その後の対応は早かった。
すぐにアーダルベルトに駆け寄り、傷に手を当てると優しい光が漏れだした。
「お、おお。魔法か。本物の?」
マジか!
本当にファンタジー世界に来ちゃったのか俺。
日本で流行の異世界物。
俺が知っている異世界ものだと、洋モノの物語で言えば、ネバー〇ンディングストーリ―。ナルニア〇物語。俺的には不思議の国のアリスなんかも入るけど。
まさか本当に回復魔法があるなんて、ちょっと感動かも。
「彼の物の傷を癒したまえ、ヒール」
呪文を唱えると光は一層強まり、苦しむアーダルベルトの顔が若干緩んでみせる。
本当に傷が治ってるんだ。
医者要らずじゃないか。
興奮を抑えられず、エリーザを見ると、彼女は本当に自分の失態を恥じている様で、必死にアーダルベルトに魔法をかけ続けている。
(あの娘、本当に凄いな)
善良で、ハッキリと自分の意見を言える強さもあり、間違いを指摘されれば受け入れ、他者を思うことが出来る。
凄く素敵なお姫様だと思う。
そんな彼女に敬意を払っていると、広間の入り口から慌ただしく女性の声が聞こえてきた。
「なんだこの状況は!!」
身長は170前後、燃える様な赤髪で年は俺より少し若いくらいか?
まず女性が見たのは、蹲っているアーダルベルトに、それを治療しているエリーザ。 そして、俺に視線を移す。
「貴様ぁ!!」
「え!?」
俺がアーダルベルトに、危害を加えたと正しく理解した様子だが、そこからの行動は非常に過激だった。
持っていた剣を迷わず鞘から抜き放ち、俺に向かって真っすぐに斬りつけて来た
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