第14話 レイガスとミルルとおっさんとオーク(10号)とそして・・・
突進してくるオーク(10号)。
冒険者もろとも吹き飛ばそうとしてくる。
その様を見て、
レイガスはさせるものかとその手には漆黒の盾。
鉄板を重ね、幾重にもなる鋼の表面にスパイク突起を付け、
その突起を向け、オークの突進に備えて身構える。
オーク(10号)はニヤリと顔を歪ませ、スパイク突起に突進していくと、
衝撃に耐えきれないレイガスは10メートルの距離を吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ!?」
「レイガスっ?!」
ミルルの心配する声にレイガスは盾を持っていない手で大丈夫だと手を挙げる。
ミルルはすぐに切り替え、手にもつ戦士の弓をオークに射出する。
――
【戦士の弓】:弓の素材は巨人木と呼ばれる、しなりの良い素材を使っており、
巨人木の持つ特性からその耐久性はプラスマイナス500度の温度にも20年間耐えられるという価値の高い弓である。
その射出の威力は、弦の素材であるジュエルスパイダーの吐き出す糸が効果を発揮する。
ジュエルスパイダーとは、この世界にある鉱石にマナが宿り、通常の鉱石より硬い。
そのマナを食せる蜘蛛が進化し、突然変異したのがジュエルスパイダーである。
ジュエルスパイダーの吐き出す糸は、読んで字のごとくジュエル(宝石)の硬さとバネを持っている。
――
ミルルの射出する鉄の矢はオークを容易く貫通し、風穴を開ける。
「ウガッ!?」
オークは何が起きたのか、穴の開いた胸元をみて、激怒する。
「お前、許さない!!」
オークの身体がオレンジ色のオーラに包み込まれ、
徐々に赤身を帯びてくると身体に刺さっている鉄の棒が伸びてきた。
「これでも喰らえ!!」
伸びた鉄棒がミルル目掛けて急速に襲い掛かる。
ミルルが避けるが、オークはニヤリと表情を変えると、棒がミルルの方角へ変形した。
ミルルは対応できず、棒の動きに付いていけず、ミルルの肩を掠めてしまう。
「っ!?」
「ミルルっ!?」
レイガスはまだ距離があり、ミルルの支援に回れない。
オークはトドメを差すが如く、新たな鉄の棒を伸縮させ、ミルル目掛けて発出。
ミルルはまだ姿勢を整えており、オークの攻撃に間に合わない。
その攻撃が当たれば、掠めていた方の血飛沫から察するに身体に穴が空くであろうことは容易に想像できた。
「ミルルっ避けろ!!」
「っぐ?!」
レイガスの鋭き発声にミルルが反応を示すが、間に合わないと思った瞬間。
「させるかよ」
おっさんの声が聞こえたかと思えばミルルの前におっさんが現れた。
「渉さん?!っ避けて!」
ミルルの悲鳴のような声。
「おうっ!避けなくてもだな」
おっさんはしゃがみ、イメージ錬成にて土壌を使い、傾斜のある壁を目の前に創り出す。
その壁はオークが発出した棒を斜めに反らし、オーク目掛けて突き進む。
その様子は海水の波のごとく、襲い掛かる土の大波。
オークはその肥えた顔を歪ませ、驚愕し、恐怖した。
そんな攻撃を見たことが無いからである。
土の大波はオーク(1号)を巻き込むと、密林の奥へ押し込んでいく。
「ウグアアアアアアアアアッ!!!!!」
オークを巻き込む土の大波は止まることなく、
密林の上で観察していた男をも巻き込もうとその高さを嵩上げしていく。
「なっ!!」
殻炎は戦慄した。あのおっさんは俺に気付いていたのかと――。
密林がざわめきを通り越し、木々の倒れる音が相次ぐのであった・・・。
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