【完結】やりこんだ死にゲーに転生、ただし【モブ】です〜ご存知″フロムハードウェア″の大傑作『フラッドボーン 』に転生した件〜

ファンタスティック小説家

第ー章 はじまりの旧市街

第1話 異世界転生だと?


「トロフィー獲得:『意志を継ぐ者』」

「トロフィー獲得:『Floodborne』』」


 視界左上にピコンッという音とともに、トロフィーコンプリートの証が表示される。


 ずっとそろえよう、そろえようとは思っていたが、まさかプレイ時間″2万時間″を越えて、ようやくトロフィーをそろえることになろうとは思わなかった。


 周回前提で作られている従来の特性と、MMORPG的やりこみ要素がどんどん追加されるおかけで、無限に遊べてしまうのが『フラッドボーン』の悪いところだな。


 あと悪いところと言えば、マルチエンディングがアルファベットと同じ数、26個も用意されていて、そのうちの23個がバッドエンディングってことくらいか。


「ふぁー、疲れた」


 俺はVRシステムの電源を落として、意識を現実世界へ帰還させ、凝り固まった体をほぐした。


 窓の外へ視線を向けると、青白く、うっすら明るくなっていることに気づく。


 いけない、また夢中になって朝までやってしまったか。


 部屋をでて顔を洗い、歯を磨く。


「明日からは、また聖杯ダンジョンにもぐって月光神秘マンの聖杯結晶そろえないとなぁ……しゃかしゃか」


 フルダイブ式のアクションRPG、その最初期の作品である『フラッドボーン』は、発売されてから6年近く経つゲームだが、いまだにずっと遊んでいられる。


 とにかくやれる事がが多い。


 対人での死闘も、自分だけの街建築も、なかなかそろわない収集要素も、難易度間違えてるサイドミッションも……そして甘い恋愛だって楽しめる。


 それまでの制作会社フロムハードウェアの作品である、ダークファンタジーな物語を残しつつも、より多くの者に受け入れられるようにつくったとか。

 

「ぺっ」


 口の水を吐きだして、ニーッと歯をだし鏡を見る。


 ふと、真顔になる。


 冴えない男の顔。

 最後に彼女がいた中学時代は遠く。

 ゲームと仕事しかやることがない独身44歳。


 もう若くない。

 次のチャンスなんてない。


 けど、ゲームの中には、俺を見てくれる美少女AIたちがいる。認めてくれる仲間たちがいる。


 だから、何もしょげることなんてーー、


「はぁ…………仕事いこ」


 それ以上考えるのをやめ、俺は私服のままアパートをでた。



         ⌛︎⌛︎⌛︎



 パチンコ屋で毎日見せたくもない笑顔を振りまく日々。


 大学時代のバイトから、ズルズルと続けてしまったまま、まるで俺だけの時間が止まったかのような世界。


 しかして、それは唐突に終わりをつげた。


 俺は、加納ただしという人間は、バイト終わりの店裏でなんの前触れもなく強盗に刺し殺された。


「ぁぁ、……」


 遠のく意識のなかで思ったのは、ただひとつ。

 

 ーーどこで間違えたんだろう



         ⌛︎⌛︎⌛︎



「起きて! 起きて、エド! また塾に遅れちゃうよ!」


「ん?」


 目を覚ますと、草原だった。

 寝ていたらしいと気づく。


 俺の顔を可憐な少女がのぞきこんでいた。


 見たことない顔だ。

 風になびく黄金の長髪と、海より深い紺青こんじょうの瞳。

 とても日本人に見えないし、こんな知り合いはいない。というかそもそと女性の付き合いがない。


「っ」


 突然の頭痛。

 頭が割れそうだった。

 脳へ流れ込んでくる莫大な情報量。


 俺はすべてを理解した。


 自分の名前がエドウィンなこと、彼が暮らした16年間、そして目の前の幼馴染マーシーの名前さえだ。


 エドウィンという青年がすごした時間が、あわてて知らないおっさんにインストールされる奇妙な感覚。


 オワコン化したソシャゲに、4年分のログインボーナスを送りつけられてるみたいだ。


「どうしたの? エド?」

「ぁ、えっと……マーシー、クラフトでいいのかな?」


 恐る恐る聞いてみる。


「当たり前だよ。あはは、エドったら変なの!」


 少女は口に手をあて、愛らしく微笑む。


 ぅ、記憶を送られたはいいが、ひどく曖昧あいまいだ。

 さては、4年分と豪語して半年ちょっとしかログインボーナス貰えなかったな?


 にしても、これはアレだな。

 異世界転生というやつだ。


 ライトノベルはざっと1000冊程度しか読破してない未熟者だが……まさか、本当にあるなんて。


 自身の適応能力の高さに、感心しつつ、案外、当事者になってみると驚かないものだな、と不思議な納得感を得る。


「エド、さぁ、起きて! 塾に行かないと!」

「というか、塾? 学校じゃなくて?」

「学校? なにを言ってるの、エド。塾は塾でしょ?」


 首をかしげる少女マーシーに手をひかれる。


 ふにふにした、柔らかい手だった。


 俺は今朝の自分に勝利宣言をする。

 

 俺は44歳だけど、次のチャンスは来たんだぞって。


 おっさんだって挑戦してやる。


 この人生、決して後悔しないように全力で頑張ろう。


 俺はそう誓った。


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