こんな夢を見た/「誰もが秘密を持っている」

青葉台旭

1.

 高校生の少年が、両親と大学生の姉と一緒に、閑静な住宅街の一戸建てに住んでいた。

 ある夜、少年はコンビニエンス・ストアに行こうと家を出た。

 夜の住宅街は静かで、暗かった。

 間隔をあけてポツリポツリと立つ街灯が、足元の狭い範囲を照らしているだけだった。

 ふと前を見ると、スーツ姿の中年男が歩いていた。

 どうやら酔っているらしく、千鳥足だ。

 こちらへ向かって来る。

 少年は悪い予感を覚えたけれど、やり過ごそうと決心し、黙って歩いた。

 悪い予感は当たった。

 酔っ払いと肩がつかって、その中年男は少年に因縁をつけてきた。

 反射的に、少年は男を突き飛ばした。

 中年男は、コンクリートの縁石で頭を打って血を流して死んでしまった。

 少年はあせった。

 殺人罪で逮捕されるかもしれないと思った。

 死体を隠さなければと思った。

 頭から血を流している死体の両手を持ち、道路の上をズルズルと引きって家に帰り、裏口から入って、死体を地下室に隠そうと階段を降りた。

 地下室の電灯をけると、そこには既に三つの死体が放置されていた。

 ますます焦った。

(いったい、この死体は何だ)と、思った。

 とりあえず、地下室に放置されていた死体の上に、自分が引きってきた死体を重ねて置き、急いで階段を昇って二階にある自分の部屋に閉じこもった。

 一階の食堂から、母親が「夕飯よ」と呼んだ。

 階段を降りて食堂へ行くと、両親と姉は既に椅子に座っていた。

 少年も座った。

 小さなテーブルを囲んで、家族四人の夕食が始まった。

 誰も声を出さなかった。

 寒々しい空気が食堂に満ちた。

 そこで少年は、ハッと気づいた。

 地下室の死体は、自分が殺した男を含めて四つ。

 自分ら家族も、父、母、姉、自分の四人。

(ひょっとして僕たちは一人ずつ誰かを殺して死体を地下室に隠したのか?)

 おそる恐る、皆の顔を見回した。

 誰もが無表情だった。

 少年はゾッとした。


 * * *


 ……というストーリーの韓国映画をテレビのロードショー番組で観た、という夢を見た。

 タイトルは「誰もが秘密を持っている」だった。

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こんな夢を見た/「誰もが秘密を持っている」 青葉台旭 @aobadai_akira

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