部屋を綺麗に保つのは大変なのです

「とんでもない目に遭ったわぁ……」

 女神アルバトロスは後悔した。

 興味本位で下界に降りるものではないと、そう感じていたのだ。


 神界は神力で満ちていて、大体のことはどうとでもなる。

 地上に降りたが故に、自分の力で歩かなくてはならず、お腹も空けば疲れも感じてしまう。

 皿洗いなどせずに、さっさと逃げ帰っても良かったのだが、そういうズルい考えは好きではなかった。


「まぁた何か引っかかってるし……

 何この動物? ベンガルハゲワシだっけ??」

 それにしても何故異世界から召喚などと考えるのだろうか?

 別に能力など優れてはいないし、#九割九分__まず間違いなく__#神界に引っかかって絶命する。


 可哀想だから適当な力を授けて送ってやるのだが……

「……最近多すぎない?」

 異世界召喚術なんて、滅多に使える技じゃない。

 特定の誰かが連続で行っているのか、いやそれにしては頻度が高すぎる。

 下界の者が何の代償も無く、ホイホイと召喚術を使えるわけがない。


「……なんて考えてたら、またぁ……?」

 以前送られてきたサイは時間がかかったのだ。

 ハエやゴキブリが引っかかっていた時は軽い殺意を覚えてしまった。

 目的はなんなのか?

 直接文句を言ってこようか……しかし……


「どうせなら別の神のところに引っかかればいいのに……

 私のところって、そんなに引っかかりやすいのかなぁ?」

 それはつまり抜け道が多いということ。

 管理が甘いとも取れるけど、そもそも召喚術を使わないでくれれば問題はないのだから……


「まぁた珍しいのが……」

 グーティサファイアオーナメンタルとかいうタランチュラ。

 召喚術師は希少生物に絞って召喚しているのか?

 絶滅しちゃうじゃないか!

 まぁ放っておいても、そう長くはもたないだろうけどさ……


「せっかくだから増やして送ってやるか。

 そーれ、そっちの世界で繁栄を目指すのだぞぉー」

 うむ、部屋の掃除を兼ねて善行もできた。

 毒グモだったと思うが、そんなことは知らない。

 召喚した方が悪いのだ。

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