ステータスがおかしいのです
僕は、砂漠の中フロックスと共に街を目指していた。
来た道を速攻で引き返すことになったフロックス的には、少々つまらなくも思えているそうだけど。
そして道中出てくるスコルピって魔物は、僕が剣で始末しながら。
来るときには見かけなかったのに、早く帰ろうと思うと今度は現れる。
まぁ大体そんなもんだ。都合よくなんて、そううまくはいかないものさ。
しかもフロックスは、スコルピが子供でも倒せる魔物だからって、僕に討伐を押し付けたのだ。
『あとで報酬は分けてもらうよ』と言ったら、『大金を子供に持たせるなんてなぁ……』だってさ。
とにかく街に着いたら、まずは食事と水分補給だな。
喉が乾いた、暑い、っていうか奴隷ってなんなのさ……
あとは、僕がこの砂漠にいた理由なんかも話していた。
「なんだと⁈
じゃあクロウは、魔人と戦闘になって生き延びたって言うのか?」
「なにあれ魔人っていうの?
なんか……確かに羽とツノがそれっぽかったけどさ」
どうやら地域によっては魔人の存在は当たり前?
少なくとも僕の住んでいた街では見たことないよね……
兵士たちと一緒にいた男も驚いていたみたいだし。
「なにが目的かは知らないが、いつだってあいつらは自分勝手しやがるんだ。
十数年前にも、通り道にあるのが気に入らないってだけで、村を一つ焼き滅ぼしやがった……」
お、おぅ……それはとんでもない。
というか、空を飛べるんだから村くらい関係ないだろうに。
ザシュッ!
僕は目の前にいたスコルピを剣で叩き斬る。
通り道に魔物がいたから、攻撃される前に倒してしまおうというわけだ。
ふと、やっていることが魔人の#それ__・__#と一緒のような気もしてしまったが……
魔物の場合は襲いかかってくるからな。
邪魔に感じたという魔族の考え方とは違うのだよ、きっと。
「それにしても、クロウの持っている剣はなんなんだ?
とてもじゃないが、それほど斬れ味が良さそうには思えんのだが……」
話題は僕の持つ剣、スコルピウスのことに。
そりゃあ気になって仕方ないのだろう。
なんていったって、フロックスでは何度も攻撃しなくては倒せないはずの魔物スコルピが、簡単に倒せてしまうのだから。
「良かったら使ってみる?
どうせ素材はその爪だしさ」
僕は剣を柄を差し出し、フロックスに渡した。
「はぁ???
あの硬い爪が剣に加工?
馬鹿言うな、スコルピの爪と言ったら、防具に使うものだろうが」
剣を受け取ったフロックスが、マジマジと観察しながら言う。
「んー……そうなの?
じゃあ僕の勘違いかなぁ?」
「そうに決まってるだろうが。
スコルピの外殻が加工できるなら、その製法で特許を取るだけで大金持ち間違いなしだ」
特許なんてあるんだ、この世界。
地球の知識も意外と使えそうな気がしてきたよ。
「作り方ならー……あ、そっか……」
「ん? なんの話だ?」
「ううん、なんでもないよ」
僕が作れるのは女神様からもらったスキルのおかげだ。
一般的には加工すら大変なのがスコルピの素材……とすれば、教えようとしたところで誰も加工ができないのだろう。
僕はフロックスの前では、スキルの使用は控えるように心がけた。
変に勘ぐられないようにしたいこともあったし、今はまだフロックスに避けられたくなかったから。
魔法は使えるけれど、それ以外は普通の少年。というのを装いたいのだが……
「まぁ……クロウの意味不明な馬鹿力だったら加工もできるのかもしれんな」
ち……力は関係ないんじゃない?
それに、スコルピを倒せるのだって剣の力。
フロックスだって、その剣を使えば……
ガキンッ!
「っと……やっぱり硬ぇなスコルピは……」
いやいや、絶対に今の手を抜いたでしょ?
フロックスが反撃をかわしつつ、再び剣を振る。
やはり、倒すには至らないようで、もしかしたら目の前のスコルピはレア個体だったりするのかと思ってしまう。
「さすがに冗談でしょー。
ちゃんと戦わないと、怪我しちゃいますよ?」
さらに僕は、『早く街に行きたい』と言ってフロックスを急かす。
「ふざけてなんかいねぇよっ。
どう考えてもクロウが化け物すぎるだけだろうが」
そうこうしている内に、反対側からもスコルピが二体。
「クロウっ、そっちのやつはお前が倒してくれっ!」
「えっ? でも剣は……」
少し戸惑ってしまった間に、スコルピは間合いを詰めてきた。
攻撃は受けたくないが、タバスコ爆弾だと自分も痛い目に遭いそうだ……
「シ、シールドっ!」
カツンッ! カンッ、カンッ!
目の前に鍋のフタが出現し、スコルピの尻尾による攻撃は完全に防ぐことができた。
そうか、これで防ぎつつ爆弾を……
だけどフロックスに見せても大丈夫か?
ただでさえ怪しまれている子供が意味不明なスキルを連発して……
背後からも視線による攻撃が僕に襲いかかる。
魔物ではない、仲間からの痛い視線だ。
「な……なんなんだ? その魔法は?」
フロックスよ、そんな目で僕を見ないでください。
いたって真面目に魔物と戦っているだけなのに、どうにもいたたまれない気持ちになる僕。
『もうどうにでもなれ!』と、僕はタバスコ爆弾を鍋のフタの向こうに投げる。
吹き飛んだ一匹は見えた。
だが一匹はぐるりと回り込んできていたようで、気づいた時には近くにいて焦ってしまう。
「お、おいっ!」
慌ててこちらに駆け寄るフロックス。
シールドを使おうにも、スコルピはもう目の前に来ていた。
「わ、わぁぁっ!!」
襲いかかる尻尾に対し、僕は反射的に両腕で顔を覆う。
ギュッと目を瞑り、ダメージを覚悟する。
冒険者が戦うような魔物、よく考えたら防具もなにも身につけず、無事でいられるはずがない。
はずだったのだが……
チクッ……
腹部にわずかな痛みを感じて、僕はそっと目を開けた。
「え……っと?」
スコルピの尻尾は、間違いなく僕の腹部に当てられていたのだが、その鋭い先端はわずかばかりに服に食い込んでいる程度。
大きいサソリなんて、触るのも怖いに決まっている。
なんとか我慢して、僕はその尻尾を握る。
「あっちいけーっ!」
ブンッ……と風を切るような音が響き、スコルピは近くにあった大岩へと吹っ飛んだ。
まぁ吹っ飛ばしたのは僕なのだけど……
「やっぱクロウの力は化け物みたいだな……」
「そ、そんなぁ……僕って普通じゃないのぉ??」
確かに身体を鍛えていたつもりはあったけど、所詮人間の限界なんて知れていると思っていた。
どう考えても僕のこれは、異次元の#なにか__・__#だろう。
女神によるスキルの影響に間違いないのだろうけれど、意味もわからず使っているのは恐ろしい……
そういえば生まれた時からやけに身体は重かったが……それで鍛えられたとか、つまりそういうこと?
あぁ、絶対にあの女神がなにかしたに違いない。
スキルが現れてから徐々に身体も軽くなったから、多分そういうことなんだろう。
それに未だに僕が何をできるのかもわかっていない。
どうにかスキルの詳細を知る術はないものだろうか……
まぁ、そんな気味の悪い少年と一緒に行動してくれるのだから、フロックスには感謝しているよ。
じっとしていてもすぐに別の魔物がやってくる。
討伐したスコルピの素材を集め、僕とフロックスはすぐに街を目指したのだった……
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