第48話 ジョンを迎えたヒロと桜子

「ジョンはすっかり馴染んでいるわね」


今日は桜子とヒロの2人で登校している。


「2日めからは道も覚えたから帰りも1人で大丈夫だと言って、朝もゲーム同好会の朝練で早く出掛けるから俺も夕飯の時くらいしか話していないな」

「満喫されているわね」

「日本に来てよかったが口癖だよ。毎晩ニュージャージーの家族とスカイッペで話しているけど来てよかった、同じ歳の友達が大勢出来た、学校が楽しいって話していてジョンのご両親が喜んでる」


「ニュージャージーに戻ったら、また大学に戻るの?」

「ああ、ジョンはプリンセストン大学に籍があるから。周りの学生は年齢も離れているし格闘遊戯みたいなカードゲームの話で盛り上がれる友人を作るのは難しいだろうな」


 恵まれた環境で豊かな研究生活だが楽しくはなさそうだ。桜子とコバたんの表情が曇る。


「ジョンのプリンセストン大学への思い入れは凄いぞ。あそこでしか出来ない研究があるからな。それにジョンは不幸じゃない。サポートしてくれる家族や教授に恵まれたから。ただ何度か普通の学校に通おうとしたことがあるらしいんだけど退屈過ぎて上手くいかなくて諦めたらしい」

「そうかしら?毎日楽しそうよ」


 ジョンはゲーム同好会だけでなく授業も熱心に受けている。


「毎時間、知らない漢字や日本語、新しい日本語表現があるから飽きないって言っていたな。一般教養の内容自体は退屈なはずだよ」

「そうなのね…」

予習復習を欠かさず、努力して成績上位をキープしている桜子にとっては羨ましい話だ。


「それに領主育成の専門教科は面白いって。都市育成型のシミュレーションゲームみたいだって興奮していたな。ただゲームじゃなくて現実だから失敗は許されないのも理解しているから自分には無理だって。みんな自分と同じ年齢なのに将来背負うものに対する覚悟が凄いとも言っていたな」


「ニュージャージーの御領主に目をかけられているんでしょう?」

「ああ。自分には関係無いと思ってスルーしてきたけど、領主…じゃなくて領地に貢献する仕事を検討してもいいかと思い始めたって」

「それは素晴らしいわね」


「でも領主には関わりたくないらしい」

「どうして?」

「もっとチビだった頃に領主の子供達が集まる場所に連れていかれたことがあってトラウマだって。金持ち過ぎて話が合わないし階級意識が強い子供が居あわせたらしくて不快な思いをしたらしい」

「そうでない御子息もいらっしゃったんでしょう?」

「ああ嫌な奴は1人だけだったって」


「私たちの学園にも何人かは、そういう方がいらっしゃるわよね…」

「ああ俺もそう言った。歴史研究会には近寄るなって」


「私のB級グルメにケチをつけそうな方が何人か在籍されているわよね…」

「あいつらは絶対に駄菓子やラーメンを食わなそうだよな。美味いものを食う機会を逃して損してると思うぞ」


「昨日の夕食は楽しかったわね」

 桜子の家にヒロとジョンを招待して桜子オススメのB級グルメを振る舞ったのだ。


 桜子が取り寄せたラーメンとオフホワイト餃子はジョンにも好評だった。ラーメンは何種類か用意して小盛りで塩や豚骨などを試してもらったらジョンは味噌ラーメンが気に入っていた。

 まだまだオススメのB級グルメがあるので週に一度は招待することになり桜子は大張り切りだ。

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