第46話 ジョンが来た
ポンコツなヒロに代わって沖田さんが完璧に準備を進め、ジョンを迎える準備は万端だ。
「うちの父さんがジョンを迎えにいって、こっちの屋敷まで送って来るそうなんだ」
「そうなのね、おじさまにお目にかかるのも久しぶりだわ」
コバたんを連れて遊びに来た桜子とヒロの愛犬の梅子、テックンと一緒にジョンの到着を待っていると車の音がした。
「来たんじゃないか?」
「お迎えしましょうよ」
揃って玄関に向かうと沖田さんと父親の話し声が聞こえた。
「父さん!ジョン!」
「ヒロ!」
ジョンがヒロに駆け寄ってヒロをハグした。
── 大きいわ…アメリカ人だからなの?同じ歳に見えないわ
ジョンはデカかった。幼い頃から数学一筋でアニメが好きと聞いてヒョロガリ眼鏡を想像していたがジョンはデカかったし日焼けが健康そうで全体的に想定外だった。
「よく来たな!」
「楽しみだったんだ!会えて嬉しいよ」
「直前まで釣りの大会だったんだろう?どうだった?」
「入賞は出来なかった。さすがに大人のプロには敵わないや」
「残念だったな」
「大会の後で父さんと一緒に海でブルーマリン(カジキ)を釣ったんだ、見てくれ」
ジョンのスマホに写っていたのは1m以上はありそうな大きな魚と並ぶジョンだった。こんなスポーツフィッシングをやっていたらヒョロガリではいられないなと認識を改める桜子だった。
「凄いじゃないか!」
「ほとんど父さんだよ。まだまだ1人じゃ無理だけど、いつか1人で釣ってみたい」
ジョンの日本語は完璧だった。アクセントに訛りはあるが完璧だった。アニメを観て漫画を読んで覚えたらしい。さすが天才だ。
「皆さん、お部屋へどうぞ」
沖田さんに促されて全員で移動した。
「久しぶりだね、桜子ちゃん」
「お久しぶりです」
「ヒロと仲良くしてくれて嬉しいよ」
「プロポーズの予告はしてあるから」
「ヒロったら堂々と惚気すぎだよ。桜子ちゃんのお父さんが複雑そうだったよ」
遠距離なので桜子と一緒にスカイッペで交際を報告済みだった。冬休みに改めて挨拶に行くことになっている。
「お祖母様とお祖父様は喜んでくださっています」
桜子がにっこりと微笑む。
「うん、いつでも会いに行ける距離で良かったとお喜びだったね。僕も嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「ヒロったら、やるじゃないか!」
ジョンがヒロの背中をバシッと叩く。
「最近な」
ちょっと偉そうなヒロだった。
「テックンも久しぶりだな」
「ガッチャ!」
テックンを抱き寄せて撫でまくるジョンが次に目をつけたのはコバたんだった。
「精霊か?ずいぶん可愛いな!」
「コバたんは男嫌いだk…」
ヒロが言い終わる前にジョンに捕獲され、コバたんがモフられた。
「ク、クポー!」
コバたんが怒りの嘴でジョンを突こうとするが巧みに嘴を避けるジョン。
「HAHAHA !可愛いな!」
ジョンの気が済むまでモフられ、コバたんが一気にやつれた。
「コバたん!」
桜子に抱き寄せられ丸くなるコバたん。
「クポ!クポッポー!!」
涙目のコバたんが片翼でジョンを指し、桜子に何かを訴える。
「ジョン…お前、凄いな」
ヒロもテックンも呆れ顔でジョンを見ている。
「何が?それよりコバたんは何て言っているんだ?」
「俺もコバたんの言葉は分からないが、間違いなくジョンのことが嫌いだって訴えているんだと思うぞ」
「Why!?」
ジョンは鈍感だった。
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