第44話 さんま記念日
「桜子、今日も昼は食堂の予定か?」
「そのつもりだけど」
学園の食堂は上品な関西風の味付けで美味しいのだ。
「今日は弁当を用意した」
「お弁当?ヒロが?私の分を?」
桜子の期待に満ちた顔が可愛い。
「ほら」
── 色違いのランチバッグを渡すと顔を近づけて匂いをかいでいる。犬っぽい…というか梅子っぽくて可愛いな。
「秋刀魚ね!?」
「当たりだ」
「ちょうど今週末、ヒロの領地でさんま祭だなって思っていたのよ」
── 桜子もさんま祭の事を覚えていてくれてるんだな。
朝からイチャイチャと登校し、午前の授業が終わって桜子待望のランチタイムだ。
「それで今日はお揃いのお弁当箱なのね」
「目黒のさんま祭か」
「ヒロの領都のお祭りで頂いた秋刀魚の塩焼きは美味しかったわ」
「今日の弁当は塩焼きは無しだ。塩焼きは焼き立てが美味いからな。代わりに桜子の屋敷に秋刀魚を届けることになっているから塩焼きは夕飯で食べるといい」
ヒロの提案に桜子の表情が晴れ渡る。
「ありがとうヒロ!」
桜子がお弁当箱の蓋を開けると秋刀魚料理と副菜が彩りよく詰められていた。
「弁当の秋刀魚は竜田揚げと蒲焼きだ。秋刀魚は桜子の屋敷に多めに届けることになっているから南蛮漬けや梅煮は夕飯に作ってもらうといい。桜子の好みだろう」
「ええ、大好きよ!ありがとうヒロ」
キュン!
── 大好き…。……そうか大好きか。俺も桜子のことが大好きだぞ!
『秋刀魚が大好き』を自分に都合よく解釈するヒロだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます