第36話 全部聞かれていた
ゴッ!ゴッ!ゴッ!
石化したヒロをコバたんがクチバシで突く。真っ赤な桜子も固まっている。
猛禽類先輩たちが素早くコバたんを確保した。
「コバたんには私たちから話があるわ」
「ヒロさんは素直な気持ちで桜子さんと話すのよ。ちゃんと好きって気持ちを素直に伝えるのよ。どうせ全部聞かれていたんだから」
「桜子さん、コバたんとの話が終わったら迎えに来るわ」
準備室で桜子と2人きりになった。いやテックンはいるがテックンは空気を読めるロボット精霊だ。
「……聞いてた?」
桜子がコクコクと肯く。
「どの辺から?」
「………… 苺飴を買ってやって写真を撮ったって辺りから」
── ほぼ全部じゃないか!
「本当なの?」
「……………………本当だ。なんとか桜子との距離を縮めたくて先輩方にアドバイスをもらってた。今日は夏休みの報告で…」
「あの先輩方、カレー愛好会でお見かけしたわ」
「桜子がお妃候補筆頭だから気になってたみたいで。その流れで俺を応援してくれて…」
「殿下とはそういうんじゃないの」
「本当に?」
「私に恋愛感情は無いし、お祖母様がお妃候補にはさせないって」
「そっか……良かった」
ヒロが嬉しそうに笑った。
こんな風にヒロが桜子に笑いかけるのは数年ぶりだ。
── いやああああ!ヒロが笑ったわ!ヒロがかっこいいんですけどぉぉぉ!
「桜子?」
「私はずっとヒロのことが好きだったから。私の想いはお祖母様も知ってるし」
「俺も」
「ヒロ?」
「ずっと好きだった。あの先輩方が言ってた通り。しつこく好きだった。桜子の写真を待ち受けにして、いつでも、いつまでも見ていたい」
── ぱたり。
桜子が倒れた。
「ちょ!桜子!桜子ー!」
焦るヒロの叫びを聞いて駆けつけた猛禽類先輩たちにより桜子はソファーに横たえられた。
女性が休んでいる部屋に居座るものではないとヒロは部室に追いやられた。しかし気になって仕方ない。
ヒロが落ち着きなく部室を歩きまわっている頃、桜子は猛禽類先輩たちに介抱されていた。
「落ち着いた?」
「はい」
「良かったわね」
「…はい」
再び真っ赤になる桜子。
「ヒロさんを呼んできたわ、入室してもらっても良いかしら」
「はい、どうぞ」
「桜子…!」
ヒロが今まで見たことないくらい心配そうな顔をしている。
「ヒロさんの家の沖田さんには連絡済みよ。愛犬の梅子ちゃんのお世話は沖田さんに任せてヒロさんは桜子さんをご自宅までお送りするようにと、おっしゃっていたわ」
「それはどうも」
── いったい、いつどうやって沖田さんと猛禽類先輩方が繋がったのか謎だ。領地でも情報が筒抜けだったし。
「帰れるか?」
「うん」
桜子の手を引いて帰った。10年前に戻ったようだった。
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