第27話 夏休みと帰省
約束通り沖田さんが運転する車で帰省する桜子とヒロ。着替えなどの荷物は宅配で送ったので身軽だ。
「沖田さん、今日はよろしくお願いします!」
コバたんを抱いた桜子が嬉しそうだ。
ワンピースのイメージが強い桜子だが今日はデニムでカジュアルなスタイルだ。
「普通に行くとだいたい6時間くらいかかりますが、二時間おきにドッグランで休憩しますので2倍の時間がかかるとお考えください。武蔵領に到着するのは夜になります。道の駅などにも寄るので、そこで土地の美味しいものを食べたりして移動を楽しみましょう」
「嬉しいわ! 新幹線よりも楽しそう!」
桜子のキラキラがすごい。
「梅子ちゃんは大人しくていい子ねえ」
「車は好きじゃないみたいで大人しくなるんだ」
車内は梅子の快適さを一番に考えられていた。のびのびと寛いでヒロとテックンに甘えている。
名古屋の休憩で梅子を休ませてからドッグランで走らせて、桜子たちは天むすを食べた。
梅子がいるのでイートインは出来ないので、激辛台湾ラーメンやひつまぶし、あんかけスパ、味噌煮込みうどんなどは諦めた。お土産にエビせんべい、
静岡の休憩では、みしまコロッケと富士宮やきそばを食べた。有名なハンバーグ店やつけナポリタンは諦めて、お土産にうなぎのパイや静岡おでんのレトルトを買った。横浜ではシウマイとラムボールと月餅を買った。
予定通り食べたいものを食べたいだけ食べて満足顔の桜子を乗せた車は、いったん春狩領に立ち寄って梅子を降ろしてから浦和の武蔵家の屋敷に向かう。
「遠回りになってしまってなんだか悪いわね」
「桜子を送り届けるのは当然だ」
「ガッチャ!」
ヒロとテックンが気にするなという表情で答える。
「ありがとう」
2人とも少しでも長く一緒にいたい雰囲気を出しており、ヒロの行動力の見せどころだと沖田さんは空気になった。
……しかしヒロは動かない。自分が空気に徹していては夏休みを無駄に過ごすことになると悟った沖田さんが動いた。
「お2人とも夏休みの約束は?」
「えっと…」
モゴモゴとはっきりしないヒロと期待に満ちた桜子。
「私が学生の頃はグループ研究なんかがあって休み中も頻繁にクラスメイトと会っていたんですよ」
本当はそんなものは無かった、ちょっとした嘘だった。
「あのね、良かったら一緒に宿題を片付けない?」
動いたのは桜子だった。
「構わないぜ」
── 何が構わないだ…自分から誘うことも出来ないなんて…このヘタレ坊ちゃんめ!
沖田さんのイライラが上限を超えた。
ヒロのヘタレっぷりに苛ついた沖田さんから猛禽類先輩たちに、ありのまま今日のことが報告された。
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