第13話 清と明美の姉妹

 下野領の跡取り娘の明美アケミは何度もヤンキー雑誌「チャンプローダー」の表紙を飾った下野しもつけ名物の暴走族の総長で喧嘩っぱやい。

 お嬢様なのに野良犬のような性格で、そこが若い領民から人気だし、それなりの年齢の領民からは生暖かく見守られている。


 妹のきよは反対におっとりしている。幼いころから活発な姉に守られ大切にされてきたので、どちらかというと受け身な性格だ。


「お姉ちゃん、お願いだから真太郎しんたろうと喧嘩しないで」

きよ…」

「私を心配してくれるのは嬉しいけど、私たちお互いに気持ちは固まってるし…」


 少し恥ずかしそうに、でも幸せいっぱいな気持ちが滲み出るきよ

 受け身な性格だが、言いたいことははっきりと言うのがきよだった。


 常陸ひたち領の住民の三ぽい」…怒りっぽい、飽きっぽい、忘れっぽいは有名だ。そこが心配でならない明美アケミ


 きよには、出来れば下野しもつけ領の真面目な若者といい感じになってもらいたい…そうすれば可愛い妹のきよが他領に嫁ぐこともない。


 なによりも長年、北関東ナンバーワンの座をかけて争ってきたライバル領の常陸ひたち領に嫁ぐつもりでいるきよのことが心配でならない。



 明美アケミは可愛い妹のきよが何世代にも渡って競ってきたライバル領地に嫁いだら、いびられて苦労すると思い込んでいるがは実はそうでもない。


 幼い頃から仲の良かったきよ真太郎しんたろうの仲睦まじい様子は常陸ひたち領のローカル番組やタウン誌で度々取り上げられており、領民は幼い二人の可愛らしい恋を親戚のような気持ちで見守ってきたし、最近ではSNSで散々さんざん拡散されている。

 最近も入学式で仲良く寄り添う2人の写真が常陸領内のSNSで話題になったばかりだ。



 しかも「ヤンキーは、かっこいい」という価値観が広く浸透している常陸ひたち領では、ヤンキー雑誌「チャンプローダー」の表紙を何度も飾った明美アケミも人気がある。


 それに北関東ナンバーワンの座を巡るライバルでありながら常陸ひたち領民は下野しもつけ領の温泉によく行く。常陸ひたち領民は鬼怒川が大好きなのだ。


 下野しもつけ領民は常陸ひたち領の海、大洗が大好きだ。

特に海のそばに位置し、潮風を感じながらショッピングや食事を楽しめる大洗シーサイド・ショッピング・タウン略してシータウンは1年を通して大好きなスポットだ。


 明美アケミが思っているより、お互いの領民は仲が良いし、お互いの領地に憧れと敬意を持っている。しかし明美アケミの誤解と思い込みが解ける日は遠いのだった。

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