掌編・随筆集

meimei

『超越者』


 生まれも育ちも普通なの、さ。

 ただ全世界の人類と違う点が私には一つだけあるの、さ。限りなく普通ピトとは違う才能。限りなく普通ピトとは違う能力。

 私は全世界の中で唯一の超越者であるの、さ。普通ピトはこれを傲慢、高慢、自惚れなどと呼ぶの、さ。それは何故か……カカ……普通ピトだから、さ。普通ピト故に普通ピトらしい安易な思想なの、さ。普通ピトの思考論理はいつ如何なる時も普通ピトなの、さ。ケケケ……。

 私は今、舗装された黒い塊の上に足の裏を刻みつけるように繰り返しているの、さ。

 私は今、移り行く季節の匂いを堪能し、触覚を働かせているの、さ。

 私は今、働いていないの、さ。私は今、三十七歳などと誰かが決めた年齢という枠に押し込められているの、さ。私は今、世界の牢獄を彷徨しているの、さ。

 極メテ愉快。極メテ痛快。極メテ常世。楽シク浄土。

 バンザーイ。バンザーイ。バンザーイ。

 エヘ、エヘヘ……エヘ……?

 まるでコカインをいれた後のホームズ氏。まるで事件が起きない時の喪失状態のホームズ氏。

 だが超越者なる私は今、天然コカインで満足なの、さ。

 空気がコカイン。

 雨降れコカイン。

 土泥コカイン。

 草生えコカイン。

 母なる大地は天然コカインの巣窟なの、さ。

 アハ……アハハ……アへ?

 正直に話そう。私は今、苦しい。狂しい。

 頭がクルクル%なの、さ。超越者は普通ピトの戦いに疲れたの、さ。

 普通ピトの必殺技なる『普通圧力』は、私をクルクルと狂い咲かせて笑いの種にしようとしてくるの、さ。クルクルピーン。エヘ。

 私は凄い。私は凄い。私は凄い。本来でもなく元来でもなく現在をもって凄いの、さ。

 何が凄いかって。オイオイ、それを菊のはヤボってもん、さ。ああん? 説明して欲しい。ヤレヤレ。これだから普通ピトワ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………スイマセンデシタ 私 ハ へっぽこ 聖人 デ アリマス ノデ。

 どうだい旦那ぁ。どうだい女将さん。ケケ毛。満足したケ? これで納得したケ? ケケ……不満そうな面。不機嫌な面。気持ちの悪そうな面。そう、それさ! 普通ピトの面! 

 怒れやルビー! 泣けやサファイア! 笑えやエメラルド!

 あ―――――ぁ…………………死の。

 あ―――――ぇ…………………生き。

 あ―――――ぃ…………………死の。

 あ―――――ゅ…………………生き。

 好き。嫌い。好き。嫌い。好き。死の。嫌い。生き。好き。コカ。嫌い。イン。

 あ~何の~為に~生き~

 あ~何の為に~死に~

 あ~何の為に~コカイン~。

 俺、私、僕、拙者、某。

 皆揃って普通ピト~ 仲良く肩組み普通ピト~ 声を揃えて普通ピト~

 愉快や~

 楽しめ~

 私は~一足先に~死にますので~

 生まれも育ちも普通なの、さ。


 2020.4.19

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