タイムカプセルの歌
海辺野夏雲
第1話 しまった・・・
「しまった…こんなはずじゃ…」
健二は薄暗い6畳一間の部屋の中で思わず一人つぶやいた。窓の外は光で満ち溢れた昼下りだが、コロナ禍のせいで人通りはまばらだ。上司の評価がどうしても納得できず、持ち前の短気も手伝って、我慢できずに2020年の3月末で3年間務めたメーカーの技術職を辞した、…までは良かった。だが、その後の転職先が見つからない。
(俺なら他社がほっては置かないはずだ)
その根拠のない自信に満ちた予測が見事に外れ、転職サイトに登録しても、さっぱりお声がかからない。しかもコロナ禍で面接の機会さえもほとんどない。何をやってもうまく行かず、ただ時間ばかりが過ぎていく。
もうお盆も近い。移動も自粛なので誰も帰省していないかも。第一、独身、職なしでは体裁も悪いから同窓生には会いたくない。それでも親に説得され、結局頭を冷やしに帰省することになった。
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