第17話 本

「歯の方も試してみる? でも、何で試したら……」

「あ、あれは?」


そう言って、ルイが指さした方を見ると、そこには本が山積みになって置かれていた。


「あの本って……」

「そう、言っていた読み終わった本」


ルイは勉強するのが好きなのに加えて、読書をするのも好きだった。お金が貯まれば、家の近くの本屋に買いに行って、読み終わっては売ることを繰り返していた。だが、耳や尻尾などが生えてきてからは、外に出ることがなくなった。そのため、読み終わった本がたまっていたのだった。


「でも、あの本、売るんじゃないの?」

「実はさ、近くにあった本屋さん、潰れちゃって」

「え、そうなの? 知らなかった……」

「それで、隣の町に本屋さんがあるんだけど、行くの遠いし時間かかっちゃうから、もう捨てようと思っていたの。何にも役に立つよりはいいと思うしだからあの本を使おうよ」

「でも、本を噛むなんて……大丈夫?」

「うーん、少しは抵抗あるけど、私の歯がどんな力持っているか確かめたいしいいよ!」


そう言って、ルイは立ち上がって山積みになった本のところまで行き、選び出した。


「どうせなら、一番面白かったのにしようかな」


そんな独り言を言いながら楽しそうに本を選ぶルイを見て僕はルイのスカートが揺れていることに気づいた。

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