第6話 夜のトイレと柚葉の心配
ジャーー
「ふぅ~、快調快調。」
身も心もスッキリしてトイレを出ると、ちょうど柚葉も風呂から出てきたところだった。
「おにーちゃん、年頃の女の子のお風呂と同じ時間トイレに入ってるってどうなの。」
なかばあきれたような口ぶりで聞いてくる。
「いや、風呂もトイレも人それぞれなんだしいいだろ別に。」
「はあ、ほんとのんきだよね。」
「へいへい、のんきで悪かったな。」
適当に流す。すると柚葉は突然まじめな顔をして、
「ちょっとおにーちゃん、こっち来て。」
と言い、ソファーをポンポンと叩く。そこに座れってことか?
「なんだよ急に。」
そう言いつつも素直に座る。お風呂上がりの柚葉ってほんといい香りだよな。ふんわりと香るシャンプーがたまらない。これだけで幸せな気分になれるのだから、女の子の香りは不思議だ。
「ねえ!おにーちゃん聞いてるの?おにーちゃんっ!」
「あ、あぁ悪い、ちょっと考え事してた。」
「またそれ!ゆずは本気で心配してるんだからね!」
「何の心配してくれてるんだ?」
「だから今言ったでしょ!おにーちゃんのトイレが長すぎるのが心配だって!」
どうやら柚葉は、俺のトイレが長いのは体の調子が悪いからではないかと心配してくれているらしい。
「体調が悪いとか、お腹が痛いとかそういうのじゃないから大丈夫だよ。ただ長いだけなんだから。」
「でもおにーちゃんが自分で病気に気づいてないだけかもしれないでしょ?1回病院で診てもらった方がいいんじゃない?それで何もありませんって言われたら安心できるでしょ?」
柚葉は本気で俺を心配しているらしい。いつになく真剣な表情で病院を勧めてくる。これは大丈夫だと言っても納得してくれそうにない。仕方ない、学校の帰りにでも診てもらいに行くか。
「分かった。そこまで言うなら病院行くよ。でも昔から俺のトイレは長いんだから、これが俺の普通なんだと思うけど。」
「分かってくれたらいいの。ゆずほんとに心配だから。じゃ、じゃあ宿題あるから。」
そう言って柚葉は部屋から出て行った。
「めっちゃ心配されてんな俺。」
落ち着いて考えてみるとなんだか嬉しくなってきた。柚葉がそんなに俺のことを考えてくれていたのも嬉しいが、こんなに可愛くてなんでもできて、そしていい匂いもする美少女に気にかけてもらっている、それがただ素直に嬉しかった。
「だめだ、ほんと。柚葉が俺の妹じゃなかったらマジで好きになっちまう…」
ドサッ!
階段の方で何かが落ちたような音がした。様子を見に行くと、柚葉が床に散らばったペンや教科書を必死に拾っていた。
「大丈夫か?手でも滑ったのか?」
「わっ!おっ、おにーちゃん!ら、らいじょぶ。」
なんだかやけに顔が赤いし呂律も回っていない。
「顔赤いぞ。熱でもあるんじゃないだろうな。」
「だっ、だいじょうぶ、ほんとにだいじょうぶだから。」
そう言って急ぐように自分の部屋に入ってしまった。
なんだ柚葉のやつ、俺が大丈夫って言っても聞かなかったくせに。自分は大丈夫で済ませてるじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます