第3話 俺はボッチの大学生
電車を降り、そのまま美結と大学へと向かう。さっきまでの会話はまるで無かったように美結が話しかけてきた。
「えーくんは今日何限目まで?」
「3限目までだから昼過ぎには終わるかな。」
「そっか、私は4限目までだから今日は一緒に帰れないね。」
美結は少し残念そうな顔で言う。美結と俺は学部が違うので、受ける授業も教室も一緒にはならない。大学の正門をくぐるとすぐ美結とは反対方向だ。
「じゃーね、えーくん。」
「ああ、またな。」
正門前で美結と別れ、教室へ向かう。俺は基本的に大学ではぼっちだ。もともと人と話すのが得意ではなく、自分から同じ教室の人に話しかけることなんてまずありえない。そのうえ、かなり目立たない格好をしていることが多いため、声をかけられることもほとんどない。(まあ美結だけは例外なのだが。)あるとすれば、隣の席の使用許可を求めてくる人くらいのものだ。だから美結には感謝している。通学中ほぼ毎回のように絡んできてくれるし、良くも悪くも俺を振り回してくれる。まあよくわからない理由で怒りだすこともあるが、それでもなんだかんだで楽しくやれている。美結がいなければ俺はこれまでもこれからもボッチ道を突き進んでいただろう。
「さーて、遅めの昼飯にでもするか。」
今日も退屈な授業を惰性で消化して俺は食堂へ向かう。3限終わりのこの時間であれば昼のピークは過ぎた時間だからそう混んではいないはずだ。
「おばちゃん、今日の定食で。」
俺は注文を伝えて、予想通り閑散とした客席の一番端で料理が運ばれてくるのを待つ。ここの食堂の定食は学生向けなだけあって、ボリュームがありけっこううまい。大学での昼飯はここの食堂の定食と決めている。
「はいよ、今日の定食ね、おまちどう。」
そう長く待つことも無く注文の品が運ばれてきた。今日はハンバーグにスパゲティサラダ、ごはん、それに豆腐の味噌汁だ。今日も相変わらずのボリュームで、ご飯もお茶碗いっぱいに盛られている。そういえばハンバーグは美結の大好物だったよな。いやあ悪いなあ、俺だけこんなうまいハンバーグ食べちまって。などと考えながら次々に口の中に放り込む。
「ごちそうさま。」
大盛りのご飯をものともせずあっという間に完食し、おばちゃんに食器を返却する。今日もうまかった、満足満足。俺はトイレで出すものをしっかり出している分、入るものもたくさん入るのだと勝手に納得している。柚葉に言ったらバカにされたが…。それと、おなかが満たされるとすぐ便意が催してくるのも俺の特徴だ。
「さて、トイレ行くか。」
心地よい満腹感とともに俺はトイレに向かった。
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