無題2 空虚 無価値


 シマウマが住む灰色の物置を、広い砂場に持ち出してみた。泥をこねる子供のいない日の出前に。星に憧れた夜の砂は、氷菓子みたいな味がして、手袋の中に詰めてしまいたかった。



 灰色の物置を、広い砂場に持ち出してみた。


 作りの甘い眼球は、飛び出しそうなほど白と黒を均等に塗り分けてある。口だけが開いたままよ身体から、母音の強い息が聞こえてくる。どこか懐かしい呼吸には、産まれたばかりのホルマリンの匂いがする。




 シマウマは、4時から5時30分まで砂場に居て、約束どおりにホルマリンの匂いは薄まった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る