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 フリーデリックのもとに、国王ブライアンからの手紙が来たのは、一週間後のことだった。


 国王の手紙を持って来たジョシュアを見て、何か嫌な予感がしないでもなかったが、以前のようにアリシアを処刑しろと言われることはないはずだ。


 ジョシュアは国王の手紙の内容については何も知らされていないようで、また妙な思い付きじゃないのかと他人事のように言いながら、城主の執務室でリンゴとカスタードのケーキを食べつつ紅茶を飲んでいる。


「お前は暇なのか……?」


 フリーデリックのかわりに第三騎士団を任されている騎士団長代理のジョシュアは、それなりに忙しいはずだった。


 ジョシュアはもぐもぐと口を動かしながら、眼鏡を押し上げる。


「ああ、ディアス殿下が戻って来てね、マデリーン様が、留学中に腕がなまっただろうから鍛えろと、ディアス殿下を連れて第三騎士団に毎日顔を出すようになって、勝手に兵士たちに稽古をつけたり、仕事を振ったりと仕切ってくれるから、俺は暇になってね」


「――いいのか、それで」


「本人がいいって言っているんだから、いいんじゃないかな?」


 それでしばらく雑務でもしておこうと思っていたら、国王にお使いを頼まれたらしい。


「早く戻る用事もないから、少しゆっくりしたいんだよね。お前の返事を持って帰って来いって言われたから、数日かけてゆっくり書いてくれよ」


「………」


 昔から、手の抜き方がうまい友人だったが、こうも堂々と仕事をさぼろうとされると、元騎士団長として苦言を呈した方がいいのか、それとも見て見ぬふりをしたらいいのか、わからない。


 フリーデリックはこっそりとため息をつきつつ、ペーパーナイフで手紙の封を切った。


 そして、手紙の文面に視線を走らせたフリーデリックはぐっと眉間に皺を寄せる。


「――なんなんだ、これは……!」


 苛立ち紛れに吐き捨てて、ぐしゃりと手紙を握りつぶしたフリーデリックに、ジョシュアはフォークを口にくわえたまま目を丸くした。

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