稀代の快楽殺人者。その名を――

その男は生前、猟奇事件を起こし続けた末に歴史の闇へ葬られた凶悪犯罪者だった。

 教会で盗んだ聖霊術士のローブを身につけて夜の王都に繰り出し、花売りや酒場から出ていく踊り子達を狙って人通りの少ない路地で首を狩った。そして拾った首を自宅の地下室にて死骸を好んで食らう虫を入れた木箱に入れ、出来上がった髑髏に絵を描くという行為を繰り返したのである。

 メネスの人々は連続首狩り事件へ恐怖した。

 止めれない。好みの女性の頭蓋を使い絵を描くのが彼にとって至上の喜びだった。

 いつ頃から狂気の芸術に魅せられ常軌を逸した行動に染まったか、それが思い出せない。何せ記憶がごっそりと抜けているのだから。ただ、絵を描く事が好きだという事と若い女性の頭蓋への異常な興味、これらだけが頭の中にあったのである。

 地下室へ侵入した何者かに切り裂かれた時、彼はやっと幼き頃の記憶を思い出した。

 輪廻の気紛れが生んだ稀代の快楽殺人者。その名を――

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