21世紀に日本語で書かれた作品とは信じられないほど緻密な英国の描写から作者の深い知識が垣間見えます。一方で文体は昔ながらの翻訳調をリスペクトしつつも現代大衆文学から滑らかさを取り入れており新鮮。エリザベスが幼馴染で許嫁のアレックスに抱く母性とも恋愛ともつかない感情は類型化を許さない「名前のない関係」として味わい深い。