もし、それを描いたのなら

 こんばんは、このはりとです。


 わたしの書くお話には、死がほとんど出てきません。一時期は、「死の表現は簡単に人の感情をゆさぶる。そんな簡単なことをしたくない」と、素人のくせに格好をつけていました。見栄ですね。おそらくまだ引きずっているはずですが、今は「回避できない死とは向き合い、描くべき」とも考えています。

 最近書いたお話で、死のつきまとうシーンがありました。頭の片隅に、ちらりと「ここで死を描けば、盛り上がるのかもしれない」とよぎります。ですが、結局、死を遠ざけました。読者さんの中には、もしかすると死を描いても受け入れてくださるかたがいるかもしれません。しかし、わたしが読みたいのは、死による物語の引き締めや話題性ではなく、生きようとする姿なのです。

 もし、自身が“必ずいる”と信じていない「死」を描いたのなら、それはもうわたしの物語ではないような、そんな気がしています。



 つづく

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