人でないものにも言葉を

 こんばんは、このはりとです。


 本エッセイでは、ときどきスタジオジブリ作品、中でも宮崎駿監督作品のエピソードを持ち出しましたが、今回のお話もそうです。


『映画 風の谷のナウシカ』には、印象に残るシーンが数々ありますが、わたしには“自身のうちに今も生きる”、そんなひと言があります。物語の冒頭で、王蟲に追われるユパ(ここではまだ当人と知らない)のもとへ急ぐナウシカが、蟲を踏みつけます。そのとき『ごめん!』と人でないものに謝るのですが、そのひと言が他のどんなセリフよりも記憶に刻まれています。

 相手が人でなくても、感情を伝える。わたしの場合、謝罪でなく感謝にあたる言葉を多く口にします。笑い話に聞こえるかもしれませんが、洗濯機に「お疲れさま」であったり、お湯につかったあと「いいお湯でした。ありがとう」であったり。もちろん返事はありません。単なる自己満足です。

 物語を公開しただけのことで気落ちしている今、わたしにかかわるあらゆるものに明るい言葉を送りたい、と、なぜかそんなふうに思っています。記憶が薄れ、忘れてしまわないように、と、まだ「書く」気力が残っている自分に、自嘲してしまいますね。



 つづく

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