俺/私の初恋はまだ続いている
ムラコウ
第1話 俺の彼女(たぶん)は幼馴染
俺──
たぶんってどういうことだよと思われるかもしれないけど、自信がないんだ。
「今日から本格的に高校生活が始まるね、アオくん」
「そうだなぁ。あんまり実感沸かないけど」
俺は一人の女子高生と一緒に肩を並べながら、これから三年間通う高校へと足を運んでいた。
その女子高生の名前は
艶やかなセミロングの黒髪に雪のような白い肌、綺麗に整った目鼻立ちを持つ
美少女だ。
佳奈は幼稚園の頃から仲良くしている幼馴染であり、小学三年生の時から付き合っている俺の彼女…………なのか?
そこら辺が何故はっきりしないのかは今から説明する。
七年前、俺は佳奈に告白された。その記憶は、今でも鮮明に覚えている。
「私、アオくんのお嫁さんになりたい!」
「えっ、何急に?」
「アオくんのことが好きだから言っただけ。アオくんは?私のこと好き?」
俺は突然の告白に顔を紅潮させたが、少し戸惑った後に素直に彼女の質問に答えることにした。
「ま、まぁ…………好き……だよ」
「本当に!?じゃあ私たち両想いだね!」
嬉しそうにそう言った彼女の笑顔を見て、俺は照れ臭くなり視線を逸らした。
「で、でも、今は子供だし結婚はずっと先の話だよ」
「うーん、確かにそうだね…………」
佳奈はしばらく考える素振りを見せた後、何かを閃いたかのような表情を浮かべた。
「じゃあ、私たちが結婚するまでは恋人同士ってことにしよう!約束だからね!」
そうして俺たちは付き合うことになった。
だけど、それからカップルらしいことをしたかと言えばそういうわけではない。
そもそも、小学校低学年の俺は付き合うという概念をあまり理解していなかった。
一緒に登下校したり、二人だけで遊んだりはしているけど、それは付き合う前までもやってきたことだ。もちろんキスもその先もやったことがない。
ずっと何も進展がないまま七年が経ち、俺は隣にいるのが本当に自分の彼女なのか疑心暗鬼のまま高校生になってしまった。
♢ ♢ ♢
佳奈が同じクラスだということを知ったときは、飛び上がるほど嬉しかった。
少なくともこの一年間は、彼女と同じ教室で一緒の時間を過ごせるからだ。
朝礼の後、一時間目の授業の準備をし終えた俺は、佳奈の方に目をやる。
学校が始まってから入学式の日を含めてまだ二日目だというのにも関わらず、佳奈は男女問わずクラスメイトに囲まれて談笑していた。
「いつ仲良くなったんだよ…………」
昔からそうだが、あいつのコミュニケーション能力の高さには本当に驚かされる。
すごいと思うと同時に、自分とは正反対だなということに気づかされる。
佳奈との距離は近いようで遠いんだよなぁ。
「っ………………」
そんなことを考えながら佳奈をじっと見つめていると、突然彼女と目が合った。
すると、佳奈は俺に用があるのかこちらに近づいてきた。
「どうした?」
「今、みんなと学校が終わったらカラオケに行こうっていう話をしていたんだけど、アオくんも一緒に行かない?」
「カラオケか…………そう言えばしばらく行ってないな」
「受験勉強で忙しかったもんねぇ。私なんか中学二年の冬にアオくんと二人で行ったのが最後だよ」
佳奈がそんな話をすると、その日の思い出が蘇ってくる。
あれからもう一年以上が経つんだなと思うと、時の流れは早いものだなと実感させられる。
「俺もそれが最後かな。懐かしいなぁ…………お前、あの時カラオケ採点で俺に同じ曲で何回も負けてめっちゃ悔しがってたよな」
「だってアオくん、歌うの上手すぎて全然勝てないんだもん。次は絶対に負けないから!」
「そっか、頑張れ」
「もー!馬鹿にしてるでしょ」
「してないしてない…………」
どうしてだろう?
「……本当に?」
「本当だよ。王者は弱き者を応援するくらい余裕がないとだからな」
「もー!やっぱ馬鹿にしてるじゃん!」
佳奈と話をしていると、どんなことをやっている時よりも幸せに感じる。
「ごめんって、冗談だから」
「私をからかったアオくんにはお仕置きが必要ですね」
「それだけは勘弁してくれ…………」
こんな感じでいつものように佳奈と会話のやり取りしていると、そんな俺たちの様子を見ていた隣の席の男子生徒が声を掛けてきた。
「なぁ、二人仲良さそうだけど、どういう関係なの?」
「「…………っ…………!!」」
俺は唐突な質問に動揺してしまう。
どういう関係って言われても………………。
俺と佳奈はお互いに顔を見つめ合う。
「……………………」
な、なんて答えればいいんだ?
恋人同士ですって言って、もし佳奈にもうそのつもりがなかったら死ぬほど恥ずかしいぞ!最悪、今後顔も合わせられなくなる。
ここはひとまず安全を考えて、絶対的な関係性だけを伝えよう。
「お、幼馴染だよ…………」
「あぁ、そうなんだ。なるほどね」
よかった、納得してくれたようだ。この答えなら何も問題はないだろう。
俺は一安心し、ほっとため息をついた。
「えっ!?」
しかし、ふと佳奈の方に視線を向けると、彼女は何故か意気消沈していた。
「佳奈、どうしたんだ?急にしょぼくれて」
そう問い掛けると、佳奈の顔が一瞬にして赤くなった。
「な、なんでもない!……アオくんのバカ…………」
えぇ…………なんで怒ってるの?
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