第2章 王族編
第17話 アレクシアの視察(1)
アレクシア、第2王子公邸。
「——ここなら転移魔術を気にせず使えるから、移動がかなりラクになるね。俺も早く使えるようになりたいなー」
アイリスはイリアを羨ましそうに見つめていた。
アイリス、アレックス、イリアの3人は今、イリアの魔術で王都の新居から建設中の公邸内へ移動していた。
今日は工事が休みの日なので、ここには3人しかいない。
「当分はその練習に集中した方が良さそうね。これから、この別邸と王都を頻繁に行き来するようになるから」
イリアの発言にアレックスも同意するように頷く。
「僕からも頼むよ、圭人。この世界は圭人の世界と違ってとても不便ですぐに呼び出せないんだから」
「そうだね、頑張るよ。愛梨はこの別邸、アレックスは王都の屋敷が拠点になるもんね」
「私たちのためによろしくね」
「うん」
——2人のためにも頑張らないとな!
「そうだ、内装で希望があるなら早めに言って。まだ変更可能だから」
アレックスが思い出したようにそう言った。
建設中の別邸は骨格やレンガ調の外壁など、外観はすでに出来上がっているが、内装はまだ途中の段階だ。
「王都の屋敷よりかなり大きいよね?」
「魔術研究の拠点になるからね。ミラやフランケンもここに移動する予定だから」
「ミラさんか……間違えないようにしないと」
アイリスは何気ない発言のつもりだったが、イリアは敏感に反応してしまう。
「——圭人、私のことを愛しているなら、間違うはずないよね?」
イリアの表情は一見笑顔に見えるが、目は笑っていなかった。
——そういうところ、ミラさんとそっくり……。やっぱり双子っていうか……。
圭人は笑ってごまかした。
「……そうだアレックス、バーベキューする場所は?」
「外で調理しながら食べる方法のことだね?」
「うん」
「テラスに設置する予定だよ」
アレックスは近くの窓から外の庭の方に指さした。
「外なら煙を気にしなくていいから、いつでもできるね〜」
「そんな方法で食事をしたことがないから楽しみだよ」
「気に入ってくれるといーな〜」
「それにしても、こんな辺境に建てるなんて……」
イリアは窓の外に広がる広大な自然を見ながらぼやいた。
「王宮の中でほとんど生活していた僕にとっては最高の場所だよ。近くには家1つないから、怪しげな魔術実験はやり放題。少なくとも、ハミルトン家のように不気味な雰囲気はないから、いいと思うけど?」
アレックスは意地の悪い笑顔でイリアを見つめる。
「……それもそうね。まあ、魔術に没頭できる場所があるならそれでいいわ」
「そういえば、学校はアレクシアのどの辺に作る予定なの?」
魔術、剣術、王室関係の付き合いで忙しくしていたアイリスは、教育事業の詳細を知らなかったので、アレックスに質問してみる。
「人が多く集まる市街地に1つと、タルコット家の農場に1つだよ。すでに建物は確保しているから、備品と人を揃えるだけになってる」
「農場に作る必要あるの?」
「教育機会に恵まれずに苦労している人が多いらしいから、作った方がいいと思って。まあ、将来設置予定の魔術系の教育は、人手がないから市街地に絞るけど」
「あー、農場って、あのチャラ男の家か……」
アイリスは某貴族のパーティで会ったカイル・タルコットを思い出し、頷いた。
「チャラ男?」
アレックスは聞いたことのない言葉に首を傾げる。
「女の子好きで、不真面目そうな雰囲気の男を指すんだよ」
「なるほど……。では、できるだけチャラ男は避けるようにして欲しい。アイリスはとても魅力的だから」
アレックスはアイリスの腰に手を回して抱き寄せ、うっとりとした表情でアイリスを見つめる。
キスをしそうな勢いだ。
アイリスは不意打ちに照れながらキスを待っている様子。
「——ちょっと? 私を忘れていませんか?」
イリアは唇を突き出していじけていた。
「まあ、イリアも美しいと思いますが……僕の好みではないので」
アイリス一筋のアレックスは、悪びれもせず笑顔でそう言った。
キスを邪魔されて少し不機嫌の様子だ。
「俺はイリアが心配だよ。公式には違うけど、俺の妻だからね」
アレックスに抱かれたままアイリスはそう言った。
イリアはその言葉で顔を真っ赤にして照れてしまう。
「圭人がそう思ってくれているのであれば……それでいいわ。でもアレックス、一応、私が第2夫人ってこと、忘れないでね?」
「問題ないよ」
アレックスはそう言うと、アイリスとキスをした。
「圭人、私とも……」
イリアは圭人の服を引っ張り、照れながらおねだりしてきた。
「もちろん、愛梨」
アイリスはアレックスから離れ、キスをした。
「ふむ……圭人はイリアに甘すぎだね」
嫉妬するアレックスがそう指摘した。
「アレックスと俺は公でいちゃいちゃできるけど、イリアとは場所を選ばないといけないからね」
「それもそうだね」
アレックスは仕方なく同意した。
アイリスのおもいやり発言でイリアは嬉しくなり、体をくねらせる。
「ねえ、馬車が迎えに来るまでまだ時間があるから、3人でもう少し屋敷内を回ろうよ」
「いいよ」
「いきましょ」
アイリスを真ん中にして3人は手を繋ぎ、見学を再開した。
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