あとがき6

毎度おなじみの解説あとがき


神名天使(Shem Angels)

旧約聖書の出エジプト記14章19節の文章をヘブライ語順に並び変え、続けて14章20節21節も同じくヘブライ語順に入れ替えて、この3節を一節ずつ並べる(この時、ヘブライ語順に並び替えした19節と21節は右から順に読めるように書く)と縦読みで三文字の組み合わせの言葉が72個できる。

この三文字の最後にel、iah、yahのどれかを付け加えると72の天使名が浮かび上がるという(最後に付け加える文字については魔術研究をしている人によって意見が異なる)

イギリスの数学者トーマス・ラッド【Thomas Rudd】によるとソロモン72柱の悪魔を制御する方法としてこの神名天使を使った魔術が考案されている。


作中ではアレクシスがコレの考えを利用し一枚のメダルに悪魔の印章シジルと天使の名前を刻む事により一つの制御された力として扱っている。


なお、作者は、こんなことを考えた人についての紹介などをしているだけなので悪魔召喚などの魔術行為を推奨する意図も特定の宗教観、魔術観を否定する意図は一切ございません。また悪魔崇拝や召喚などのあらゆる魔術行為を実践したとしても一切の責任は負いません。



ケルト芸術(ラ・テーヌ様式)

この芸術様式は文化圏の広さ故に出る特徴の差異と時代の長さから始まりと終わりが明確にできないために定義することが難しいが考古学では一般的に紀元前10世紀頃から紀元前1世紀までのラ・テーヌ文化の芸術品を指す言葉として使われる。

芸術様式としてはケルト神話の視覚化、幾何学模様、渦巻模様、動物文様といった特徴が主に見られる


ケルト芸術の幾何学模様ケルティック・ノット【Celtic knot】は無機有機の物理的な区分を無視し異なるもの同士を一つに融合もしくは調和させるという象徴を持つことから当時のケルト人が性質や属性は変化するものと考えており、輪廻転生といった価値観を持ち合わせていたのであろうと推測されている


作中ではこれら象徴を利用し、あらゆる要素を無視して攻撃を可能とする魔術となっている

また融合という概念から相手の魔術を吸収し別の魔術同士を混ぜ合わせて前例のない魔術を作り出すことも可能だが どういった結果を招き寄せるかは必ずしも予測できるわけではないため使用者のクラリナは危険性を鑑みて乱用はしないようにしている



時祷書

祈祷文を個人用に編集した中世の装飾写本

昔は自らの敬虔さを誇示するために豪奢な時祷書を制作依頼し装飾の良し悪しを競ったりしていたため芸術品としての価値も持ち現代でも美術館などで見ることが出来る



月歴図レーバーズ・オブ・ザ・マンツズ(Labours of the Months)

時祷書の挿絵やゴシック様式の教会にあるローズウィンド型ステンドグラスなどで見られる一年間の農村活動などを描いた十二枚の絵のこと

デザインは文化によって異なるので明確な基準は存在しない




ユヌスの天体地球儀

天文学者ユヌス・イブン・アル=フサイン・アル=アズルラビ【Yunus ibn al- Husayn al-Asturlabi】が1144年に作った天体地球儀

天文学、占星術に使われていた


現在はルーブル美術館に所蔵されている


作中ではフェリクスの魔道芸術として登場




主題の位階について


主題の位階。翻訳によっては絵画の序列とか主題絵画の序列とも言われる(個人的には画題の位階が一番しっくる翻訳ですが)


1648年に生まれた芸術の権威。王立絵画彫刻アカデミーが決めた公的な基準で(私が調べた限りでは)その序列は静物画<風景画<肖像画≒風俗画<歴史画<寓意のある歴史画。となっており「地上の神が創り給うたものの中では人間が最も完全なものであるから、神にならって人間を描く人が最も優れている(中略)しかし肖像のみを描く画家は、この芸術の最高の高みに達しているとは言えない。そこに達するには一人でなく幾人かの人物を再現し、歴史や物語を描かなくてはならない【フェリビアンの講演録の序文より】」という考えの下で成り立っている


ジャンルによって優劣を決めてしまう考えではあるが明確な基準があるため感性によって評価が左右されないという利点が存在する以外にも、パリに訪れ活動していた北方画家(いわゆるフランドル派。静物画や風景画を得意としていた画家たち)の影響力を低下させ王立絵画彫刻アカデミーの権威を強めることが出来るというメリットがあった


ちなみ王立絵画彫刻アカデミーは王族の後ろ盾によって成り立っていた組織であったためフランス革命中(1791年)に解体されているが主題の位階の考えは講演会で周知徹底がされていたこともあり後世の画家たちに長く多大な影響を残したと考えられている(人によってそういう影響はなかったとする意見もあるでしょうが)


追記:王立絵画彫刻アカデミーは権力者を引きずり下ろしたがってた芸術家達が解体したので、おそらく王族の後ろ盾とか無くても何かしらイチャモンつけて解体したとは思います。実際、解体してから4年後には芸術アカデミーという形で復活している

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