第33話 オアシス

「えっ!一体どういうことなの!?」カルディアは驚きを隠せないようである。彼女の視線の先にはあの女の姿があった。


「仕方ないんだ、出来るだけ多くの戦力が欲しかったから……」言いながらヒロ自身も少し減なりとした様子であった。


「おほほほほほ、やはり私の事を必要としたのですね。アプロディーテちゃん」そこにいたのは相変わらずえげつない露出の服を着たディアナの姿だあった。オリオンのいう通り邪心の宝石に心を操られていただけで本来は悪い人間ではないようだ。


「ヒロ様、お気をつけください」あの事件以来発足したヒロのファンクラブのような組織が別れを惜しんでいた。ファンクラブ会長はユーリであった。あの時のヒロは女性の姿をしていたが、今はマントを羽織った青年の姿をしている。勿論口紅も塗ってはいない。その凛々しい中性的な青年の姿に女性達は夢中になっているようだ。


「はははは、僕もヒロには負けたな……」オリオンがなぜかすこしため息をついて寂しそうな顔をした。


「おい、どうしたんだ?調子が悪そうだけど……」ヒロはアウラ達の顔色を確認する。アウラとカカは少し青い顔をして、イオはもう立ちながら眠っているような状態であった。

「なぜか、悪い夢でも見たみたいで寝不足だっちゃ……」「カカも眠いのね」二人とも少しフラフラしている。


「おい、頑張ってくれよ。お前達には期待しているんだから!」ヒロが軽くアウラの背中を叩くと今にも倒れそうになった。


「よし、イオは僕が連れていこう」オリオンは眠っているイオを持ち上げると自分乗る馬の前に跨がせた。それでもまだイオは眠ったままであった。


「ハルピュアを襲撃する前にテントで一晩夜営をして体を休めよう。このままでは彼女達は戦えないだろう」オリオンがイオの頭を撫でた。どうやらイオの事をオリオンは気に入っているようであった。

 ヒロも用意された馬にアウラといっしょに、カルディアはカカとルイの背中に乗る。ちなみにディアナは使い魔のスフィンクスを呼び出してその背中に乗った。


「それでは、出発するぞ!」オリオンの、合図で一同は出発した。


 出発してから数時間経つと砂漠に差し掛かかり気温が一気上昇してきた。これ以上前に進むと体力を急激に奪われるだろうと判断し、一旦ここで夜営をする事にした。


「ああ、暑い!暑いダニ!!」目をさましたイオが騒ぎだした。


「本当ね!夜になったら少しはマシになるんでしょうけど……」カルディアも少しへばっているようであった。


「おっほほほほほ!」外からディアナの笑い声が聞こえる。彼女の姿を探すとオアシスで水浴びをしているようであった。


「いいっちゃね」アウラ達も飛び出してく。


「私も!」カルディアも軽装になって湖に飛び込んだ。ヒロは近くの木漏れ日の下で昼寝を始めた。


「ヒロ様もかるだっちゃ」アウラが水を飛ばしてくる。


「つ、冷たい!俺はいいよ少しでも休息を、取りたいから……、遊んでおいで」ヒロはアウラに微笑んだ。アウラは可愛く微笑むとカルディア達と戯れた。


「アプロディーテちゃんは来ないの」ディアナがヒロを誘う。


「誰なのよ、そのアプロなんとかって!?ヒロは昔から泳ごうって誘っても絶対に嫌がるのよ。きっと金ヅチなんだわ」カルディアはそういうと気持ち良さそうに泳いでいた。


「いい眺めですね。ヒロはいいのですか?」オリオンがヒロの隣に座る。


「あ、ああ、俺は夜にでも汗を流します」そういうと目を閉じた。


「そうですか……」オリオンは手に持っていた本を開いて読書を始めた。

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