第32話 お願い
「カルディア、ちょっといいか?」ヒロは部屋のノックをしてから、カルディアに声をかける。
「何よ、改まって……」今、時計は夜の十時頃であった。カルディアは風呂上がりで髪を櫛でとかしている。
「お前に相談があるんだが……」アウラ達が眠っているようなのでヒロは少し音量を絞り小さな声で話す。
「いいわよ。私の出来る事ならなんでも言ってみて」カルディアは自分が役に立てる事があるのなら何でも協力しようと思った。そういえば、オリオンと出会った頃にも一度、夜にヒロが訪ねてきて二人で話をしたことを思い出していた。たしかあの時ヒロはカルディアの事が大切だと言ってくれたのを思い出した。ヒロは普段はどんなに酷い事を言っても、いつも最後は自分を大切にしてくれる。彼女にとってそれがいつも嬉しかった。
「明日、カルディアに歌を唄って欲しいんだ」ヒロは真面目な顔をしてお願いをする。
「へっ?」突然の申し出にヒロが何を言っているのか解らなかった。明日、また祭りでもあるのかと彼女は思った。
「明日、俺とオリオンはハルピュアの退治に出かける。で、カルディアも一緒に協力して欲しいんだ」ヒロは真剣な目でカルディアを見つめる。
「ええ、それは勿論それは構わないけれど、どうして私が歌を唄わなければいけないのよ?」ヒロの言っている意味が彼女にはまだ理解出来なかった。
「ハルピュアは女の子の綺麗な歌声を聞くと大人しくなるらしいんだ。出来るだけ危険な状況を避けて奴を仕留めたい。だからカルディアは戦いよりも唄うことに明日は集中してほしいんだ」ヒロはカルディアの両肩に手を置いた。
「わ、解ったわ。私の歌が役に立つなら……」カルディアは恥ずかしそうに横を向いた。「でも、私……そんなに歌は上手じゃないわよ」謙遜をするように彼女は捕捉する。
「いつものカルディアの明るい声を聞いていればだいたいの想像はできるよ。ありがとう、明日は頼んだぜ」ヒロはそう告げると額に二本の指を当てて敬礼のような仕草でウインクを投げた。カルディアはその仕草を見て少しドキリとした。
「お休みなさい」カルディアはゆっくりとドアを閉めた。「歌か……、あ、あー、あああああ~」彼女はアウラ達を起こさない程度に喉を調整した。
「うーん……」なぜかベッドで眠るアウラ達は嫌な夢でも見ているかのように
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます