シュプレヒコールが終わらない
伊予
屋敷編
1話-1 崩壊の兆し
「巫女様、巫女様、巫女様」
数多の声が重なりわたしのことを呼ぶ。わたしは何の言葉も返せず、ただ、呼ばれたからゆっくりとその声の方向へ向かった。途中何度もよろけてしまったのは許してほしい。未だこの身体は重心が取りづらいのだ。ある程度まで辿り着くと、両側から二人の男の人がやってきて、わたしを豪奢な椅子の上に座らせてくれた。ほっとしたのは、ほんの一瞬。
「巫女様」
「巫女様だ」
「巫女様よ」
「巫女様!」
見下ろす限り一面の人の海。みんな、わたしを求めている? みんな、わたしに期待しているの?
「巫女様、民にお言葉を」
隣の男の人が囁いてくる。何でもいいと言ってくれたけれど、わたしは緊張してしまってうんうん唸るだけで結局口を開けなかった。男の人たちは大丈夫だと慰めてくれた。でも、やっぱり悔しい。
何度お願いしても、何度頼んでみても、かみさまは何も助言してはくださらなかった。意地悪ね。
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