ノート

2時間目 世界史

1時間目に体育でかつ昨日夜更かしをしていた佐藤は、激しい睡魔に脅かされていた。

(ふぁ~。昨日夜更かしなんてしなければよかったなぁ。でもため込んでたドラマ1話観たら止まらなかったんだよね。自業自得か。頑張って起きてないと。)

隣の席の小鳥遊姫子。彼女は既に彼の異変に気付いていた。

(佐藤眠そう・・・。昨日ため込んでたドラマでも観て夜更かししてたのかな?膝枕して寝かせてあげたい・・・!てかうとうとしてる佐藤可愛すぎる・・・!)

(野口先生の世界史眠たいんだよな・・・。優しい先生がゆえに声まで優しいから、心地いいんだよな・・・。ああ、もう、意識、が・・・)


~5分後~

(佐藤すっかり寝ちゃってる。か、可愛い!佐藤の寝顔可愛い!!でも一緒に暮らすようになったら、毎日この顔見るんだもんね。今のうちに慣れていかないとだよね。ああ、やっぱ可愛すぎる・・・)

なんでもう一緒に暮らすことが決まってるのだ。

(いや、別に今慣れなくてもいいよね!次第に慣れていけばいいよね!だって同棲するにしても大学生になってからだから、あと何年かは先だし、うちの科はクラス替え無いから、ずっと一緒のクラスだし!だから今はうっとりしてていいよね!)

だからなんでもう一緒に暮らすことが決まっているのだ。

ところで説明しよう。彼女たちの通う高校は、特待科という高校入試の際、成績の良かった上位30名が入ることができる科があり、二人ともその科に在学してるので3年間クラスは変わらないのだ。ちなみに辞退可。


~30分後~

(佐藤まだ寝てる・・・。どんだけ眠かったんだろう?ずっと睡魔と戦ってたんだね。お疲れ様。頑張った佐藤の頭、なでなでしたい。そして、佐藤が甘えてきてハグしてきて、そこから・・・ってぎゃあああああああああ!最高じゃない!でもこれ以上の展開はダメ!R-18だよ!)

興奮し、机をバンバンたたく小鳥遊姫子。

「おおーい、小鳥遊。どうした?」

「い、いえ、なんでもありません・・・。すみません。」

(もう!佐藤のせいで怒られちゃったじゃん!ならそうね、キ、キスで許してあげる!!)

当然する度胸も、ましてや「キスして」という度胸も毛頭ない。

(キ、キスはちょっとえっちすぎるわね・・・。R-18だわ・・・。なら寝顔見せてくれるだけで許してあげる。あぁ、やっぱ可愛い・・・)


キーンコーンカーンコーン。

授業終了のチャイム。

(授業終わって、号令までしたけど、起きない・・・。未だ見てたいけど・・・仕方ない!)

「ちょっと、佐藤!あんたいつまで寝てるわけ?!もう授業丸々寝てるじゃない!別に次の授業も寝てたら追いつくの大変そうとか思って起こしてるわけじゃないから。わかったらはやく起きなさい!!」

「あっ・・・!あぁ、寝てた・・・。起こしてくれてありがとう小鳥遊さん。もう休み時間だ。相当寝てたんだな、僕。」

「さっきの授業ずっと寝てたわよ!おかげでこっちは癒され・・・じゃなくて、こっちまで眠くなってきたんだから!」

「ごめん・・・。」

「いいのよわかれば。」

(謝らないで佐藤!!ちっとも眠くなかったから!!素直になれ私!!)

「ね、ねえ、佐藤。あんた板書もまともにできなかったんじゃないの?」

「そうだった・・・。ずっと寝てたから・・・」

「そ、そう。ならさ、佐藤・・・」

(頑張れ私・・・!素直になるのよ・・・!)

「ん?何、小鳥遊さん。」

「なら、わ、私の、ノート、み、見せてあげよっか・・・?」

「え?いいの?小鳥遊さん!ありがとう!すごく助かるよ!」

「し、仕方ないわね。」

「ホントにありがとう!あ、なんか今日のところいつもより字が綺麗で、カラフルで、すごく見やすい!」

「え?!!べ、別にあんたのためにいつもより綺麗に板書したとかじゃないから!!今日は冴えてた日だったってだけなんだから!!」

「うんうん、あるよねそういう日。僕も時々あるよ。」

(違うのよ佐藤!これは佐藤が見てわかりやすいかなって思っていつもより丁寧に、綺麗に板書したの!!佐藤のためなんだからぁぁぁ!!)


照れて素直になれない小鳥遊姫子。

でも今日は少し進歩。

(まあ、ノート貸せてよかった。勇気出して、素直に言えてよかった。こうやって少しずつ素直になって、いつかちゃんと佐藤に・・・)


小鳥遊姫子の挑戦はまだまだ続く。

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