ジュース

「ぷはあ。やっぱりおいしいなあ、この『美味すぎてあかんジュース スイカ味』は。」

「佐藤、あんたほぼ毎日それ飲んでるわよね。」

「うん。これ好きなんだよね。毎日飲んでるなんて、小鳥遊さんよく知ってるね。」

「か、勘違いしないでくれる?!別に毎日あんたのこと見てるとかじゃなくて、隣の席だから見えるだけよ!」

「勘違いなんてしてないよ。隣のせいだから嫌でも見えちゃうよね。」

「そうよ!嫌でも見えちゃうんだから!」

(違うのよ佐藤!私はたとえあんたとの席の距離が一番遠かったとしても、毎日あんたのこと見てるから!佐藤しか見ないから!)

素晴らしい愛である。


「ところで小鳥遊さんって、ジュース飲んでるところあんまり見ないよね。好きじゃないの?」

「まあ、好んで飲みはしないわね。昔から母に茶道を教えられてたから、お茶が好きなのよ。」

「小鳥遊さんってお嬢様だもんね。お嬢様学園に通うとでも思ってたよ。」

「い、家が近かったからよ。別に誰かと一緒がよかったとかいいじゃないから。」

(ホントは佐藤と一緒に通いたかったからなの!佐藤のいない学校生活なんてつんないもん!)

そんな思いは、佐藤に伝わるはずもない。

「家近いほうがいいよね。ゆっくり寝られるし。」

「そ、そうよ!寝不足だと肌荒れるし!」

現に、小鳥遊姫子の肌はすべすべである。

「確かに!小鳥遊さん肌綺麗だもんね!」

「き、きれっ・・・。ぐへへへ・・・。綺麗・・・」

「どうしたの、小鳥遊さん?」

「な、なんでもないわよ!」

(綺麗だって・・・。佐藤が私のこと綺麗って・・・)

佐藤がほめたのは肌であるが、いいように変換されてしまっている。


「そういえば、さっきジュースの話したの、もし小鳥遊さんがジュース好きだったらこれおいしいから少しあげようかなと思ったけど、お茶が好きみたいだから今度お茶一緒に飲もうね。」

「え!?!?えっと、その、そうね・・・、そう!で、でも私、のど乾いてきたなぁ・・・」

「そうなの?でもごめんね、僕今日持ってきたお茶飲み干しちゃったんだ・・・」

佐藤がお茶を切らしてることなど、小鳥遊姫子が知らないはずもない。

「あら!それは残念ね!じゃあそのジュース一口くれるだけでいいわ!」

「これ?別にいいけど・・・。はい。」

「あ、ありがと・・・。いただくわ。」

(これで、佐藤と・・・、間接キ・・・)

「あぁ!!小鳥遊さん!これって間接キスになるじゃん!!ダメだよ!!」

そういって佐藤は、小鳥遊姫子が今にも飲もうとしていたジュースを取り上げ、財布を持って全力ダッシュで教室を出た。

「ひゃ!!さ、佐藤ぉ・・・」

(あとちょっとだったのにぃ!!こういうとこには気づくなんて!佐藤のばあああか!!)

さらに小鳥遊姫子の心情に不安が生まれる。

(それとも、私とそういうことするの、嫌だったのかな・・・)

あんな風に逃げ出されては、強気な性格の小鳥遊姫子も弱気になってしまう。


1分後、佐藤帰還。

「はあはあ、小鳥遊さん・・・。これ・・・」

そういって戻ってきた佐藤の手には、

「お茶?私に?」

「う、うん・・・。小鳥遊さんのど乾いたって言ってたし。僕のおごりだから。」

(これって、佐藤から私への愛のプレゼント?!)

違う。

「あ、ありがと・・・、受け取ってあげるわ。」

「いえいえ。」

「私との間接・・・なんとやらが嫌で逃げだしたのかと思たわ。」

「そんなわけないよ。小鳥遊さんみたいな可愛い女子とそんなことするの恥ずかしくて・・・」

「かっ、かわわわわわわわわわわわ・・・!!!」

「どうしたの小鳥遊さん?」

「な、なんでもないわよ!別にかわいいとか言われて舞い上がってるわけじゃないんだからね!」

「まあ、小鳥遊さんなら言われ慣れてるもんね。」

「ま、まあそうね。私くらいになれば毎日言われるわ!」

(でも、好きな人から言われる『可愛い』って全然違うんだよ・・・)

「と、とにかくありがとね。ま、また私も何かおごってあげるから・・・」

「ありがとう。楽しみにしてるね。」


小鳥遊姫子の挑戦はまだまだ続く。

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