アヴァロンを求めて

金空鈴鳴

プロローグ

 西暦三二■■年。


 世界には、黄昏が訪れていた。


 人類による環境破壊で空と海は汚染された。大地は干上がり、砂漠化が進んだ。

 生物は過酷な環境を生き抜くために、突然変異を繰り返した。


 地球の資源を既に獲り尽くしていた人類は迫る黄昏に対抗できず、餓えに苦しみ、寒さに震え、病魔に喘ぎ、突然変異した生物――『昏獣コンジュウ』に捕食され、滅びの一途を辿っていた。


 そんな世界に唯一存在する希望の国――アヴァロン。


 アヴァロンは清潔な水が無限に湧き出し、緑が生い茂る、危険や不安から完全に開放された理想郷だという。


 人々はアヴァロンを求めた。


 しかし、アヴァロンは見上げても頂を見ることの叶わない巨大な白壁に囲まれ、扉は固く閉ざされている。その扉を潜り理想郷の居住権を得るためには、対価として大量の『マナ』が要求された。


 マナは突如地球の各地、または昏獣の体内から発見されるようなった未知の結晶。内部には超高濃度のエネルギーを有しており、石油やガスの枯渇した人類にとっては貴重なエネルギー資源だ。


 人々はマナを求めて黄昏の進む大地を探索したが、険しい環境や強大な昏獣を前に命を落とす者が殆どだった。


 それでも理想郷アヴァロンの暮らしを夢見る者たちは、今日もマナを求めて黄昏の地に赴く。



 ――これは、黄昏に抗う物語。

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