元魔物討伐隊の女騎士は討伐ギルドに所属して親友の娘を育てます
風間 シンヤ
第1話
アルフォンス王国の魔物討伐隊第一部隊隊長であるシオン・マグダエルは、西の渓谷に出たレッドドラゴンの討伐遠征をこなし、今ようやくアルフォンス王国に帰ってきた。
「これでようやくクーに……クーデリカ様にお会いできるわね……」
普段は無表情が多い彼女が微笑を浮かべてそう呟いた。彼女の今の気持ちはとにかくクーデリカ会いたい気持ちでいっぱいだった。
シオンが会いたがってるクーデリカ・アルフォンスは、アルフォンス王国の王太子妃である。母親が銀狼族という狼族の獣人の中でも特に珍しい種族の獣人で、彼女もその血を継いで銀色の長く美しい髪に、頭の上に狼のような銀色の毛並の耳。銀色のフサフサの尻尾を生やしている。瞳の色は綺麗な黄金色で微笑みはまるで月の女神様のようだとシオンは思っている。
そんなクーデリカとは対照的にシオンは黒髪で黒い瞳。美人な顔立ちはしているものの、目が吊り目がちの為、無表情でいるとよく怒って睨んでいると勘違いされる。一応女性らしくクーデリカと同じぐらい腰の辺りまで髪は伸ばしているが、手入れや戦闘時に邪魔なので本当は切って短くしたいのだが
「シオンも女の子なんだからちゃんとしなきゃダメ!」
と、クーデリカに言われ、髪の手入れはクーデリカがするという条件で渋々髪を伸ばしている。
王太子妃であるクーデリカと、騎士家系の騎士爵位の家であるが身分はほとんど平民に近いシオン。そんな2人はお互い唯一無二の親友である。
なので、先程シオンは思わずクーデリカの愛称を呼んでしまったが、部下いる事に気づき慌てて訂正した。
(クーは王太子妃。私は特にその気はないのだけど、クーは私を自分専属の護衛騎士にするって言ってるから、言葉遣いとかも気を配らないとね)
正直、シオンは剣を振るって戦うのは嫌いではなく、今の仕事の方が性に合ってると思っているが、親友がどうしてもと言うし、親友が自分を心配して言ってくれているのもよく分かっている。それに、クーデリカを守る騎士をするのも悪くないと思っている自分もいる。正直、貴族等上の身分に対する言葉遣いは苦手だがクーデリカの為に頑張ってみようとシオンは思っている。
「アルフォンス王国魔物討伐隊第一部隊。ただいまレッドドラゴンの討伐任務を終えて帰還しました」
シオンはアルフォンス王国の門番にいつも通りそう言葉をかける。いつもなら、「ご苦労様です!」と言って元気よく敬礼して門を開けてくれるのだが、何故か今日は自分から目線を逸らすように「あの……ご苦労様です……」と、覇気のない返事を返す門番を不審に思ったシオンは問いかける。
「何か?」
シオンはそう言えば、自分の部下達の様子もおかしかった事に今更ながらに気づく。いつもならワイワイと喋りながら移動する部下達が一言も喋らず、自分に言いたい事があるのに言えないといった表情をしている部下達を不思議に思ってはいた。
「その……わたしの口からは……出来れば……早く家に戻って報告を受けた方がよろしいかと……」
門番のその言葉に色々と引っかかるものを覚えながらも、シオンはその言葉に従って自分の家へと向かった。
「クーデリカ様が聖女殺害未遂の容疑で処刑された」
家に帰り、父親や3人の兄に今日の討伐完了報告をした後、門番や部下達と同様とても言いづらそうな表情をした父と兄達だったが、やがて、父が放ったその言葉にシオンは驚愕した。
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