第28話 再現 六
「あっ、お待たせしました和紀さん!
待ちました?」
その日、和紀と恵麻のデートの日、和紀は恵麻より先に待ち合わせ場所にやって来た。
その待ち合わせ場所、また和紀と恵麻がこれから行こうとしている所も、理沙との初めてのデート場所と同じ所だ。
「いいえ。全然待ってないですよ。」
「でも和紀さん、顔赤くなってますよ!」
『これ、どこかで聞いたような気がする…。』
和紀はその瞬間理沙のことを思い出したが、『これぐらいのやりとり、誰にでもあることか。』
そう思い、気を取り直した。
しかし、
「何か、こうやって2人で過ごすのって、久しぶりな気がします!
…ってか私が和紀さんに告白して以来ですよね!」
「あ、はい…。」
「でもおんなじ大学に通ってるのに、何か不思議な感じもします。」
「ええ、そうですね…。」
「でも何か学内で話するのって、恥ずかしいですよね…。
周りの目も気になりますし…。」
「はい…。」
『…僕の記憶が正しければだけど、こんなやり取り、理沙ともしたような…。
でもそれはだいぶん前のことだし、僕の気のせい、思い違いかな…。』
和紀はそう思ったが、尚も不思議な気持ちが拭えない。
「でも学内で話できない分、今日は2人で楽しみましょうね!」
「そうですね…。」
「…って、さっきから和紀さん、何か上の空じゃありません?」
「あ、ごめんなさい…。
そうですね楽しまないと!」
恵麻にそう指摘され、和紀は少し焦るのであった。
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