第21話 忘れられない恋 十六

 ※  ※ ※ ※

大学3年生の和紀はその日、いつものよう  

に講義を受けた後、家に帰ろうとしていた。

 今日は12月の始め。また、和紀がいつも参加しているジャズバンドのサークルの練習はない。だから、その日は特に予定はなく、すんなりと家に帰る予定…だったのだが。

 「あ、あの…すみません。高坂和紀さんですか?」

 和紀は同じ講義を受けていたであろう女子大生に、声をかけられる。

 「は、はい、僕は高坂ですが…、

 あなたは?」

「あ、わたし、恵麻(えま)って言います!

あ、あの、それで…。

 いきなりですが高坂さん、あなたの連絡先、伺ってもよろしいですか?

 あの…、あなたの入っているジャズバンドのサークルに、興味がありまして…!」

「えっ…!?」

突然の恵麻の言葉に、和紀は動揺を隠せない。

「あ、あの、私1人ではどうしてもサークル室に入れない、って言うか何て言うか…。

 だからお願いします!

 一緒にサークル室まで行きたいんです!」

そして和紀は半ば勢いに押され、

「…分かりました。そういうことなら。

 僕の電話番号は…、」

と、連絡先を恵麻に教える。

 「…高坂さん、ありがとうございました!」

そう言って恵麻は、その場を去っていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る