第6話 忘れられない恋 一

 ※  ※ ※ ※ 

 和紀は、理沙を地元では有名な時計台に呼び出していた。

 そう、その日は12月の始め。まだ初雪は降っていないが曇り空のその日、和紀は理沙に「ある想い」を伝えようとしていた。

 『…しかし南沢さんを呼び出すの、勇気がいったな…。』

 和紀と理沙との出会いは、高校で同じクラスになったことである。

最初、和紀は同じクラスになった理沙のことを「可愛らしい子だな。」と思ったが、それ以上の感情は持っていなかった。

 そんな和紀の心に変化が訪れたのは、和紀と理沙が体育祭の実行委員に選ばれてからである。

 「…これから準備とか色々大変だけど、よろしくね和紀くん!」

「はい、南沢さん…。」

今まで女の子と話すのがそれほど得意でなかった和紀は、理沙の「和紀くん」という下の名前の呼びかけにも関わらず、緊張して「南沢さん」と名字で返してしまう。

 またそんな和紀とは対照的に、理沙は笑顔で和紀に対して接する。

 『僕…これから大丈夫かな?』

その時和紀は、少しばかりの不安を持った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る