アルカナ戦争 22

冬蜜柑

0,Another prologue

 「これを受け取るかどうかは君次第だ。」


 背の高い白髪の青年は怪しさを含んだ笑みを見せながら5、6枚のカードを取り出してみせた。

 一瞬、周りの音も光りも時間でさえも止まってしまったかのような錯覚に陥る。その風貌と口ぶりにはどうしてか惹かれるものがあり、その一言は言うなれば神の啓示のようだった。


 プラスチックでも金属でもないようなそのカードは、どこか神秘的に見えた。どうしても、そのカードから目が離せないでいる。


 目の前にいる白髪の青年やカードの謎も然ることながら、何故このような提案を自分にしたのか、様々な疑問が生じ頭の中で渦巻いている。しかし、それらの疑問に対する答えなど出るはずもなく、一種の諦めのような感情と共に1枚のカードを手に取った。

 

 カードを表、裏と回転させ観察してみる。よく見ると確かに見覚えのあるカードだ。

 突然青年は告げた。

 

「ルールは4つ。

1,大人に見つかってはならない。

2,決闘はどちらかが死ぬまで。

3,開戦は放課後のチャイムと共に。

4,勝者にはその者が望むものを与える。」 


 何のことか分からず尋ねてようと顔を上げた。

 だが、あの謎の青年はいつの間にか、消えていた。辺りを見回してみるが、そこに気配と呼べるものは、何一つ存在しなかった。まるでそこには初めから何も居なかったかのように。


 しかし、自分の手の中には確かに先程受け取ったカードがある。

 もう一度カードを眺めてみる。

 自分でも、何故こいつを手にしたのかは分からない。でも不思議とこいつを手放そうとは思わなかった。


 一陣の風が過ぎ去る。


 この瞬間から自分の運命は大きな変革を迎えることとなった。


 学校生活という名の戦争が幕を開く。

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