1st Movement #3 Can't be Lost.

58th A New Plan.

俺はガレージの自室にいた。応接机と椅子にはいつもお世話になっているSUNARM《サンアーム》社社長、それに前回、修理してくれた女の子が座っている。彼女の名前はキサラギというらしい。


社長は言った。

「リリスの戦闘データは見せてもらった。それであれから俺たちで検討した改造案はこいつだ。」

バンッと社長は机の上に大きな設計図面を幾つも出した。


社長は続けた

「装甲は原則として取外し。フレームはほとんどき出しになる。武装ぶそうは小太刀二十刀。ロケット弾はない。機銃は小径20ミリを四門。あとマントはこいつの発案だ。」

そういうと隣の女の子を指差した。


彼女は少し恥ずかしそうに答えた。

「裸というのはちょっとアレなので。」


「分かった。やってくれ。」

俺は即答した。


社長は話を続ける。

「あともう一つある。これは、リリスからの要請だ。」


社長はそこで言葉を切ると、タバコをふかした。深く息を吸って吐き出すと白い煙がもくもくと口から出た。



「ここだ」


社長はそういうと指で図面のコクピット部分を指差した。

リリスはパイロット用脱出だっしゅつ装置のオミット《とりはずし》を要求してる。俺は反対だ。確かにそれで更に軽量化できて骨格フレームの強度は増す。だが俺にはそこまでしなきゃならないとは思えん。」


俺は少し考えたがすぐに答えた。

「いや、やろう。これはやるべきなんだ。」


社長は驚いたようにこちらの目を見返した。


「お前、その時はもう二度ともどれねぇぞ。」


そういうと社長は鋭い目で俺の眼を見た。


「構わない」



「お前が負けても誰もお前を責めやしねぇ。」



しばらく間があった。

俺は何も言わなかった。ただ目を反らさなかった。



「はぁ。分かった。このプランでいく。

 しかしなぁ。



 お前、俺達の作ったコクピットで死ぬなよ。」


俺は答えた。

「…。分かってる。」


社長は席を立つと頭をポリポリ掻きながら部屋を出ていった。女の子も後ろに続いて出ていった。

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