26th Repairing.
「ありがとうございました。」
俺はそういって一礼すると診療所を出た。ガーネットは手を振って見送ってくれた。名残惜しい気持ちを振り切って自分のガレージへと車を走らせた。舗装されていない道を進みながら窓の外を見ると大麦畑が一面に広がっている。麦のいい香りが風にのって車に運ばれてくる。
「もうそんな季節か」
俺は独りつぶやいた。
山道を通ってガレージにつくと機兵の大型シャッターが開いていてクレーンの大きな音がしていた。俺は車から降りると何事かと思ってガレージへと足を運んだ。ガレージへ着くと入り口には焼けて半壊した機兵の腕が転がっていた。近くに誰かいる。深く帽子を被っているが着ているツナギの曲線で女の子だと分かる。機械油にまみれたツナギにはいつもお世話になっているSUNARM《サンアーム》社のロゴがついていた。
俺は彼女に近づくと声をかけた。
「ありがとな」
彼女はいきなり声をかけられて少し驚いた様子だったが、すぐ言葉をかえした。
「いえ、仕事ですから。損傷は酷いですがなんとかなる、と思います。」
「それはよかった。」
彼女はボロボロになった機体を見上げて言った。
「いい機体ですね。」
「もう大分古い型だけどね。」
「大事にされてるのが分かります。」
「しかし、今回はこんな目に合わせてしまった。みんなにも面倒をかけて。」
「そんなことないですよ。大仕事だって社長は張り切ってましたから。」
「ははっ。そりゃあそうだ。」
フフッ
彼女も笑った
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