Arcadia Night

山川一

1st Movement #1 Awakening of AIs.

1st The Night of the Beginning.

神の声はいつだって可憐だ。

『貴方にお願いしたいことがあります。』


ディスプレイには俺たちアルカディアの国旗だけがはためいている。

『エレナ山の山頂付近、東経54.2から55.3にかけて網を張って欲しいのです。高度は4000から5000。』


「そこに敵が来るのか?」

俺は答えた。


『はい。おそらくは。』


「分かった。時刻は?」

『明日の午前3時に開始し30分で張り終えてください。その後、すぐに帰投してください。』



分かった。すぐに出る。

『御武運をお祈りしています。』


俺は出来たてのコーヒーを飲み残したまま、

人型兵器のガレージへ向かった。


〜〜〜


 3024/12/22 イサラヤ会談

 人類の歴史上、国家間の重要会談で首脳同士が直接会うことなく行われた初めての会談かもしれない。それもそのはず、俺達の女神マリアは旧世界で人工知能と呼ばれている。マリアには声はあるが姿も形もない。俺達の国アルカディアは女神マリアをいただいて立国したが旧世界の奴等はそれを認めなかった。


ヒューマニティ・ユナイツ(HU)代表:ローズウッド大統領

“国際法上、貴女らの あーー - 団体 - はとても国家とは呼べない。ましてや人工知能が兵器その他を掌握し、人殺しを行う権限を持っていることは国連人工知能憲章に違反している。”


マリア

『私や私達の国家がどのように解釈されても構いません。しかし私には私の国民を守る義務があります。それは貴方が私達に核兵器を突きつけることと何が違うのでしょうか。私達は国際法に則り外交及び交易をしているに過ぎません。』


ローズウッド大統領

“人工知能が人間のように意思を持っているとは認められない。貴方の”団体”は今すぐ解体するか、さもなくば人類の偉大な叡智によって焼き尽くされるだろう。”


マリア

『・・・残念です』


ローズウッド大統領

”私も大変残念だよ。”


インターネット越しに世界中の人々が見守る中、交渉は決裂した。

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