世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。【書籍3巻発売中&コミカライズ連載中】
編乃肌
プロローグ 伝説のモデル『hikari』
女の子のトキメキをぎゅっと集めて煮詰めた、女性向け大手ファッションブランド『キャンディインザキャンディ』。通称『アメアメ』。
若い女子たちから圧倒的な人気を誇る、そのブランドの専属モデル『hikari』といえば、いまでは名を知らぬ者がいないほどの有名人だ。
バランスの取れた肢体に透けるような白い肌。
小さなお顔に大きなパッチリお目め。
腰まで流れる特徴的な飴色の髪は、どんな髪型だろうと彼女を引き立て、その愛らしさを持ってあらゆるコーデを完璧に着こなす。
なによりも彼女は笑顔がすこぶる魅力的だ。
ぷっくりとした形のいい唇をゆるめ、ふわりとひとつ微笑むだけで、冗談ではなく周囲は花が咲いたように明るくなってしまう。
始まりは『アメアメ』の公式WEBサイトから。
新作の白を基調とした夏物ワンピースを着て、ひまわり畑を背景に全身図でアップされた『hikari』の写真に、見る者すべてが心奪われた。
【待って、『アメアメ』の新しいモデルの子誰あれ。むっちゃ可愛いんですけど!】
【天使がいた】
【『hikari』ちゃんヤバイ『hikari』ちゃんヤバイ『hikari』ちゃんヤバイ】
【同性の私でも惚れそう……肌キレイすぎない? スタイルよすぎない? 笑顔まぶしすぎ!】
【これは世界史にひとりの美少女】
彼女の写真は瞬く間にSNSで拡散され、あっという間にトレンド一位。
問い合わせが殺到し、着ていたワンピースは秒で完売する異例の事態となった。
しかしながら『hikari』の素性は一切不明であり、公式サイトには簡素なプロィールしか載っておらず、ブランド側も意図的に情報をセーブしている。
様々な憶測が飛び交ったが、謎は謎のまま。
そのミステリアスさがまた話題性を呼んだのだ。
そんな彼女につけられた称号は『世界一可愛い』女の子。
誰もが納得のいく称号だ。
彼女ほど可愛い人類は他にいないとまで、当時は騒がれたくらいだから。
――――だからきっと、誰ひとりとして思うことすらしないだろう。
「あー……午後の体育の時間、面倒だな。弁当食べたら早退してえ……」
昼休みを前にした私立高校の教室。
窓際の席で頬杖をつきながら、やる気なさそうにグラウンドを眺める黒髪の少年がひとり。
どこからとっても普通、平凡、これといって特徴なし。
下手すればクラスメイトにすら「そんな奴いたっけ?」と言われてしまいそうな、モブキャラで影の薄い『俺』が、あの『hikari』の正体だなんて――そんな残念極まりない事実。
きっと誰も思わないよな。
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