◆◆葉桜の君に◆◆
ぎざ
第1話
俺は春川桜子が嫌いだ。
小動物のように弱い。優柔不断で、人に流されやすい。そのくせ集団には交わろうとせず、昼休みなどは一人で過ごしていることが多い。
自分一人で生きてなどいけないというのに、弱い自分のまま貫き通す、無駄な頑固さが嫌いだ。
生徒一個人にこのような感情を持つことは良くないことだろうか。
しかし、生理的に受け付けないものは致し方ない。
授業で指名しても覇気のない返事は聞こえないし、教科書を読ませても抑揚のない朗読は聞き取りづらい。黒板に解答を書かせても、文字の大きさから形に自信のなさが滲み出ていた。
行動の一つ一つが遅い。
怯えているのか。
躊躇しているのか。
考えているのか。
諦めているのか。
生きるのに苦労する。
生きていくのに支障が出る。
誰かが教えてあげた方がいいのだろう。
俺の話を聞いて、理解できるだろうか。
自分が弱い脆い存在なのだと。そう理解する体力はあるのだろうか。
自分の弱さに押しつぶされやしないだろうか。
その弱さを背負って生きていく強さがあるのだろうか。
いや、無いだろう。
俺は、そういう人を知っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます