序曲『魔女の息子』(12)
赤の他人を支援する、見返りを求めない紳士という幻が崩れ、絶望に合点がいく。
セシルは家族に売られたのだ。魔法を使える希少種として。
「あんた、人買いだな!」
「違う。僕は探偵だ」
探偵という言葉は、震えるセシルの耳に馴染みが無かった。わからない。信じられない。
「オレをどうするつもり?」
声を波立たせる少年に、男はゆっくりと近づいた。
すらりと伸びた長身に圧倒されそうになる。その彼に肩を掴まれ、空色の瞳で貫かれた。
「どうもしない。君の願いと契約書の通り、君を学校へ通わせる。その代わり、僕の仕事を助手として手伝ってほしい。それだけだ」
「嘘だ!」
「嘘じゃない! 天に誓ってもいい! モルフェシアへ着いたら、すぐにきみの故郷へ電話をかけようか?」
きめ細やかだったテノールが急に爆発し、セシルは身体を縮こまらせた。
青年の声音はすぐに元通りになった。
「君のお婆様と約束したんだ。ダ・マスケの秘密も、君のことも。絶対に守ると」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます