最終話 幸せ

仕事が終わり、家に帰っている時スマホが震えた。

ポケットから取り出し、画面を見ると秋大から電話が来ていた。

通話ボタンを押す。


「もしもし?」

「もしもし〜仕事終わったか?」

「おう!っで、どうした?」

「いや、前聞いたのどうなったかなーって」

「あっ、それのことか!今日確認してきたぜ〜俺も七菜美も大丈夫だよ」

「良かった〜じゃあその日になる予定でよろしく!」

「おう!」

「春樹はどうするんだ?」

「俺も、そろそろかなーって……」

「坂石さんも待ってると思うぞ……まあ、大事なことだからじっくり考えろよ」

「そうだな……」

「じゃあ、詳しい時間はまた教えるから」

「オッケー!じゃ、おやすみ」

「おう!おやすみ」


そうして電話は切れた。

秋大と楓はこの前籍を入れたらしい。

2人に結婚のことを教えられた時は、ほんとに嬉しかった。

次は、俺たちか……



そしてその一ヶ月後、2人の結婚式が開かれた。

高校以来の友達もいて、とても楽しかった。

2人のスピーチの時に俺の話が出た時は思わず泣いちまったな……

式が終わった時に、七菜美は


「ほんといい式だったね……楓ちゃんのウエディングドレス、綺麗だったな……」


そう言っていた。

ウエディングドレスを着るのは女性の夢というのをよく耳にする。

俺も、七菜美には着させてあげたい。

お互い仕事にも慣れてきた。

お金も、溜まっていないわけではない。

俺はカレンダーを見つめ、

よしっ!

そう言って気合を入れた。



そして、カレンダーに丸をつけた日になった。

今日は七菜美の誕生日。

そして、互いに休日なのでゆっくりできる。

俺は少し早めに起き、朝食を作っていた。

盛り付けている時、寝室からまだ半分寝ているような七菜美が出てきた。


「おはよ〜」

「おはよ。誕生日おめでとう」

「ありがとう〜」


俺に抱きつき、頭をグリグリしてくる。

全く……可愛いな……


「もうご飯できるから、顔洗ったりしてきて」

「は〜い」


七菜美が洗面所のほうに行った時、俺はサッとプレゼントを部屋から出す。

テーブルにご飯を起き、先に座る。


「お待たせ〜ご飯ありがとね!」

「おう!じゃあ、食べようぜ」

「「いただきます」」


テレビのニュースを見ながら、いつも通り朝食を食べる。


食べ終わった食器をシンクに置いていく。

七菜美も食べ終わったようなので、ついでに持っていった。


「あっ……ありがと!」

「いいよ、こんぐらい」


食器を置き、手を洗う。

そしてテレビを消す。

まだ見ていたのか、七菜美は少し驚いた表情でこっちを見ていた。

俺は、引き出しからさっき取り出したプレゼントを渡す。


「誕生日おめでとう」

「え?!ありがとう!!……開けてもいい?」

「うん」


そう言って七菜美は袋を開けていく。


「あっ!これこの前私が欲しいって言ってたピアス!……ありがと。嬉しい!」

「それは良かった」


七菜美は顔を近づけ、唇を重ねた。

とっても嬉しそうな彼女の笑顔が見れて、俺も幸せだった。

でも、一番のプレゼントはこれではない……


それからお昼を普段行かないようなところで食べた。

その後は少しショッピングをした。

秋になり、日も落ちるのが早くなってきた。

そろそろ夕日が綺麗に見える時間だ。

よし……


「七菜美」

「ん?」

「今から、ドライブしないか?」

「うん!」


そうして俺たちは車に乗った。

そして、俺はある場所に向かって車を走らせた。

そこに着くまでは他愛のない話をし、楽しい時間を過ごした。

そして、夕日が半分落ちている時、目的地に着いた。

なんとか間に合ったな……


「ちょっと、海でも見にいかない?」

「海久しぶりだ〜行こ行こ!」


波の音が辺りに広がる。

そして、目の前には夕日が輝いてる。

ここは、俺が七菜美に告白したところと同じ海。

そして、あの時と同じような風景だった。


「綺麗だな〜」

「そうだな……」


緊張が体を襲う。

心臓が急に暴れだす。

一度深呼吸をし、気合を入れる。


「七菜美!」

「は、はい!」

「七菜美と付き合ってから、楽しい時、幸せな時、辛い時だって、いつも七菜美がそばにいてくれた……この先もずっと、七菜美の隣にいたい……俺と、結婚してください!」


そう言って片膝を地面につけ、指輪の入った箱を開く。

七菜美は口元を手で覆い、大粒の涙を流しながら、大きく頷いた。


「はい!」


七菜美の左手の薬指に、指輪を通す。

七菜美はその手をじっと見つめ、最高の笑顔を見せた。

そして、勢いよく抱きついてきた。


「わっ!……あぶねーな」

「ありがと春樹〜!……海ってもしかして、あの時のこと覚えてくれてたの?」

「当たり前だろ?これからも、ずっとよろしくな」

「こちらこそよろしくね!大好き!」

「俺も。愛してる」


お互い目を合わせ唇を重ねる。

これが俺と七菜美が結婚して初めてのキスだ。

こうして、俺たちは家族になった。


俺たちに家族が増えたり、駿介たちが結婚するのは、まだ、先の話……

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