第83話 馬鹿野郎

今年も体育祭の季節がやってきた。

しかし俺は、ある問題に直面していた。

最近七菜美の俺に対する態度がおかしい……

メールでは普通なのだが、学校であったりするとなぜだか避けられている気がする。

思い当たる原因はないが、俺が知らぬ間に何かしでかした可能性が高い。

なんだよ……


体育祭を2日後に控え、今日はリハーサルがある日だ。

あっちいな……


「お〜い春樹!今日のリレー絶対勝つぞ!」

「そうだな〜やったるか!」


駿介とハイタッチを交わし、小走りで集合場所に向かう。


リレーでは無事一位をとることができた。

疲れたな……

日陰に入り、腰を下ろす。

目線を前に向けると、みたくない光景があった。


「なんだよまじで……」


そこでは七菜美がクラスの男子数人と楽しそうに話していた。

俺とは話さないのに他の奴とは話すのかよ……

無性に腹が立った。

言葉に表せないような怒りが溢れてくる。

見ていられず、その場から離れる。


「クソッ!」


そう言って俺は走り出した。


その後の練習は、苛立ちを感じながらやっていた。


昼休憩、七菜美の教室に向かった。


「七菜美!」


いろんな感情が混じっていたためか、気付けば強い声で呼んでいた。

七菜美は声に驚いたのかびくりと体を跳ねさせ、こちらに向かってきた。


「どうしたの?」

「今日、一緒に帰れるか?少し話したいことがある……」

「うん……私も話したいことがあるから……」


何か覚悟を決めたような顔で、七菜美は俺に力強くそう言った。

言いたいことってなんだよ……

そんな七菜美に少し苛立ちを感じ、俺は自分の教室に帰っていった。


そして放課後、部活が終わり七菜美に体育館裏に来てと言われたので向かった。

体育館裏に着くと、そこに七菜美はすでにいた。


「お待たせ」

「部活お疲れ……」

「おう。そっちもお疲れ……」


無言になり、なんだか緊張が走る。


「言いたいことってなんだ?そっちからでいいよ」

「……あのさ……春樹って藤田さんのことが好きなんでしょ?」


意味の分からない質問に思わず固まってしまう。

俺は思わず思っていることをそのまま口に出す。


「何言ってんだ?」

「とぼけないでよ!」


七菜美から聞いたことのないような大声に驚く。

だけど七菜美が何を言いたいのかはいまだに分からない……


「俺は七菜美が好きだ!藤田さんはただの友達だよ!」

「嘘ばっかり!」

「嘘じゃない!」

「じゃあなんでこの前藤田さんと2人っきりで図書室にいたのよ!」


2人で図書室……

やっぱりあれは七菜美だったんだ……


「違う!あれは勉強を教えてただけで」

「それだけじゃない!クラスを覗いた時はいつも藤田さんと一緒じゃない!」

「だから勉強を教えてるだけって」

「嘘なんて聞きたくない!」


なんで本当のことなのに信じてくれないいんだよ……

俺の頭で何かが切れた……


「なんだよさっきから本当のこと言っても嘘嘘って!いい加減にしろよ!七菜美だって最近俺のことは避けてるくせに他の男ばっかと話して!この男たらしが!」


頭に血が上り自分がなんて言っているのか理解するのに数秒かかった。

少し冷静になり、自分の言ったことがやっと理解できた。

最後の言葉は絶対いらない言葉だったよな……

目の前の七菜美を見ると目に大粒の涙を溜めていた。

何か言おうと言葉を探していた時、左頬に強い衝撃が走った。


バチンッ!


「最低……」


涙を流しながら、七菜美はそう言って走って行った。

七菜美の平手打ちが、俺の頭を冷ました……

七菜美に藤田さんのこと言っておけば七菜美をこんなに不安にさせることはなかっただろうな……

なのに……なのに俺は……あんなクズみたいなこと言ってさらに七菜美を傷つけて……

ほんとクソ野郎だな俺……

一滴の涙が痺れた左頬を伝う。

真横の壁に拳を叩きつける。


「クソッ!クソッ!何してんだ俺!ほんと最低な奴だよ……」


拳は止まり、力が抜け膝が崩れる


「うう……」


俺の馬鹿野郎……




〜あとがき〜

読んでいただきありがとうございます!

2人が迎えるのは幸せか、別れか……

2人の結末を見届けてください!

よろしくお願いします!

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