第57話 サボり

今週が終われば夏休み。

夏休み中の部活はほぼぎっちりだ。

春樹とほとんど会えない……

そう思うと、胸が痛かった。

祭りの頃から感じていた気持ちが、どんどん強くなっていってる気がする。

幸せの代償に辛さが私を襲う。

どうしたらいいのかも分からない。

最近春樹を避けてしまっている気もする。

もう自分が嫌になる……

次は体育なのだが、全くやる気も出ない。


「楓ちゃん、ちょっと気分が悪いから次は休むね。先生に言っておいてくれる?」

「大丈夫?分かった、言っとくよ……」


初めて授業をサボる。

みんなには悪いが、仕方ないと自分に言い聞かせる。


「失礼します。少し気分が悪いので、休ませてください」

「あら、坂石さんよね?大丈夫?……とりあえず熱測りましょう」


どうやら先生は入学式の挨拶で、私を覚えていてくれたらしい。

当然熱はないのだが、ベッドに横になった。

この先どうしたらいいんだろう……

私は耐えれるのかな……

せっかく結ばれたって言うのに……


考え事をしていると、寝られるはずもなく、時間が少しずつ過ぎていく。


「失礼します!転んじゃいましたー!あと七菜美ちゃんのお見舞いに来ました!」


楓ちゃんの声が聞こえた……


「転んだ手当てはするけどお見舞いは……まだ授業中よ?」

「お願いします!話が少ししたいんです」

「……分かったわ……手当てしたら私は職員室に行くわ。好きにしなさい」

「いいんですか?!」

「あなたの真剣なその目を見たら断れないわ。教師としてはいけないことしてるけど、責任は取らないからね」

「はい!ありがとうございます!」


数分すると、扉が動き

カツカツという先生の靴の音が小さくなっていった。

すると、カーテンが急に開いた。


「七菜美ちゃん大丈夫?何かあるなら聞かせて欲しい」


恐らく転んだのは嘘かわざとだろう。

そこまでしてくれたのに、話さないわけにはいかない……


「実はね……最近幸せだけど辛いの……」

「……うん」


楓ちゃんは、何も言わず、

話せるなら話して欲しい

そんな思いが伝わってきた


「春樹とはずっと一緒にいれないでしょ……わがままと分かってるけど、それが辛いの。幸せな分だけ、辛さも大きいの……」

「だから最近春樹と距離を空けてたんだ……」

「……うん……」

「そっか……ずっと好きだった人と結ばれて、いろんなことを求めるのは仕方ないと思う……だけど……春樹を避けちゃ進めないよ?」

「……でも……」

「七菜美ちゃんの知ってる通り、春樹は優しい。春樹なら大好きな七菜美ちゃんのことなら受け止めてくれると思うよ。だから、話してみたらどうかな?」

「……もし、拒絶とかされたら、私生きていけないよ……」

「春樹がすると思う?一緒に帰った時必ず

あ〜今日も七菜美可愛かったな〜

とか言ってんだよ!あいつの惚気はもう腹立つくらい凄いから!」

「そ、そうなんだ……」

「あらあら〜顔真っ赤にしちゃって〜」

「う、うるさい!」

「七菜美ちゃんって自分に自信がなくない?」

「え……うん……」

「やっぱりか〜多分七菜美ちゃんが思ってるより七菜美ちゃんは可愛いし、優しい子だよ!」

「そ、そうかな……ありがとう……」

「だから、自分に自信を持ちな!」

「はい!師匠!」

「あはっ!師匠って、ふふ……あ!話は変わるけどさ、昔の私と秋大の話していい?」

「うん!」


「実はさ、私と秋大1回大喧嘩したんだ〜!理由は、嫉妬とか、思いの少しのずれとかが爆発してさ……ほんと別れる寸前まで行ったんだよね……」

「そ、そうなんだ……でも仲直りできたんでしょ?」

「それがね、春樹が手伝ってくれたんだよ〜あの時春樹がいなかったらこうして付き合ってなかったな……自分の事でもないのに本気で悩んで、説得して、どんだけお人好しだよっ!って思っちゃうほどだったな……ほんと春樹には感謝しきれないよ。七菜美ちゃんはそんな春樹に惚れたんでしょ?」

「うん……春樹の優しさが、私の変わるきっかけになったんだ……」

「七菜美ちゃん。気持ちを溜め込んでいくといつか爆発して取り返しのつかないことになるかもしれない……だから頑張ってね!」

「ありがとう!」

「その笑顔だよ!」


キーンコーンカーンコーン

授業の終わりのチャイムが鳴った。


「そろそろかな……」

そう言って楓ちゃんはベッドから立ち、扉に向かう。


「じゃあね〜」

「え、うん。ありがとね!」


そう言って部屋から出ていった。

その時、扉が再び開いた。


「七菜美!!」




~あとがき~

さて、2人は最初の試練を乗り越えられるのでしょうか?!

次回をお楽しみに!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る