第58話 ヒーロー
「七菜美!!」
「え?は、春樹?!」
そこにはボタンが1段ずれて、服もきちんと入りきっていない春樹がいた。
「はー、はー……体調は大丈夫なのか?」
「え、うん……サボりだし……」
「え?!さ、サボり!?……まあ、体調が大丈夫ならいっか……」
「あ、あのさ……少し話しがしたい……」
「……いいぞ!」
まずなんて言えばいいのだろうか……
そう思っていると、春樹は、優しく私に言った
「別に焦らなくていいよ。ゆっくりで」
春樹のこういった優しいとこが大好きだ。
1度深呼吸をし、思いを口に出す。
「あのね……私春樹と付き合えてとんでもないくらい幸せなの。」
「うん」
「でもね、そのかわりずっと一緒にいたいとか、誰にも奪われたくないとか、いろんな思いが出てくるの……幸せの代償なのかな?辛さも込み上げてくるの……」
「うん」
「どうすればいいのか分からなくて……春樹と一緒にいたいけと、辛いのも嫌なの……なんか自分勝手でごめんね……」
「七菜美はなんか勘違いしてる気がするぞ」
「え?か、勘違い?」
「ずっと一緒にいたいと思うのは俺も同じだ。俺も誰にも奪われたくないと思ってる。一緒に帰って、別れるときはとても辛いよ。だけどさ、この気持ちにもそのうち、ちゃんと向き合えると思う。いや、向き合う。だからさ、2人で頑張っていこうよ!」
なんなのよ……
春樹の優しさは私の不安を吹っ飛ばしてくれた。
なんでだろう……
安心してか、自然と涙がこぼれてくる。
「ゔ、ゔゔ……」
「えっ?ちょっ?七菜美?!」
「春樹ごめんねぇ……辛くなるのが怖くて避けてた……でも、春樹が傍にいてくれない方がもっと辛かったよ……」
「そういう事か……もっと俺を頼ってくれよ。迷惑なんて思わないしさ、七菜美の悩みならどんなのでも向き合いたい。2人で乗り越えようよ」
「ゔん!」
涙が収まらないまま、春樹に抱きついた。
春樹は私を受け止め、頭を優しく撫でる。
とても安心感があった。
ああ、春樹をもっと好きになっちゃったな……
顔を上げ、狙いを定める。
そして、春樹の顔に自分の顔を素早く近づけ、唇を重ねた。
「お、おい……学校だぞ……」
「春樹からはしてくれないの?」
「だぁーもう!七菜美、好きだ!」
そう言って私に顔を近づけ、唇を重ねた。
春樹の顔は真っ赤っか。
思わず笑ってしまいそうだ。
私も人のことは言えないけどね!
**
保健室の先生が帰ってきた。
「もう大丈夫です。ありがとうございました」
「それはよかったわ。いろいろと頑張ってね!」
七菜美と一緒に保健室を出た。
七菜美を見ると、ニコニコととても上機嫌だった。
その顔を見て、安心はしたものの、学校でイチャイチャするのは良くないよな……
そんな反省もしつつ、3人が待っている食堂に向かった。
「あ、やっと来た〜」
「2人ともお疲れ様!」
「え?なに?何したの?!」
「でんちゃんは黙っとく!」
「悪いな、お待たせ」
そして、いつも通りに昼食が始まった。
最近少し気まずい感じもあったが、原因は解決した?いや、解決はしてないな……
まあ、とにかく前みたいに普通に楽しく話せるようになったので良かった。
「ねえねえ!夏休みプール行こうよ!」
「いいけど部活結構詰まってるぞ」
「1日ぐらいみんな休みの日あるでしょ?!」
カレンダーを確認すると、みんな部活がない日が3日あった。
「あ、俺この3日旅行だわ……」
「まじかよ……」
「まあ、ダブルデート楽しんでこい!」
「じゃあ、でんちゃんには悪いけどそうしよっか……」
「了解だ」
こうして、俺たちはダブルデートとして、プールに行くことが決まった。
~あとがき~
無事第1の壁を乗り越えた?感じになった2人
です。
また、甘いのがしばらく続きそうです。
よろしくお願いします。
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