第14話 俺の思い

正門に行くと、部活体験を終えた秋大と楓がいた。


「おつかれ〜 いや〜やっぱりバスケは楽しいですな〜」

「おつかれ。あれ?なんか浮かない顔してるけど何かあったか?」


秋大は妙に察するのが上手い。

俺の変化は大抵すぐ見抜かれてしまう。

秋大にはかなわないな……

「おつかれ」と返し、俺は相田の事を歩きながら2人に話した。


「なるほどな〜 正面からライバル宣言はなかなか珍しいな」


ケラケラ笑いながら秋大はそう言う。

まあ、俺も同じことを思ったが……


「で、春樹はどうすんの?」


楓が横からヒョイと顔をのぞかせる。

俺は少し気合いを込め、2人の方を向く。


「どうするも何も、坂石さんと結ばれるよう努力するよ。こうなるのは分かっていたし、当たり前のことだろ?」

「良かった〜 チキンな春樹だから諦めるとか言うかと思ったよ〜」


俺は確かにわりと慎重に行動する。

そのため、チキンと言われることもある。


「うるせーな。俺にとっては初恋なんだよ。恋に関してはチキってばっかいられるかよ!」

「いいぞ〜春樹。その意気だ!」


そっからは部活の話などをして楽しく帰った。


家に着き、2人に別れを告げて玄関に入る。

「ただいまー」と言って、いつもどうり手洗いうがいを済ませて部屋に直行する。

とある動画で、

『好きな人とのメールのやり取りは毎日するべき』

とあったので、俺は何かしら坂石さんに毎日メールを送っている。


『おつかれ〜 部活体験どうだった?俺はすげー楽しかったよ!』


15分間考えた結果決まった文章を誤字がないか何度も確認し、送信ボタンを押す。

坂石さんは割と早く返信をしてくれる。

しかし、その少しの時間がとても長く感じる。


「ピロン!」

携帯から着信音が発せられた。

急いでアプリを開くと、そこには公式からのメッセージだった。

クソッ!

別に誰が悪いわけでも無いのだが、思わずスマホをベッドに投げる。


「ピロン!」

今度こそは!と思い、アプリを開く。

そこには坂石さんからのメッセージがあった。


『お疲れ様!私もとっても楽しかったよ〜久しぶりに激しく動いたから体中が痛いけど 笑』


彼女からしたら、ごく普通のメッセージなのかもしれない。

でも、俺からしたら宝物のように嬉しいものなのだ……

そう思い、スマホを抱きしめていると部屋のドアが開いた。


「お兄ちゃんごは…… 何してんの?気持ち悪いよ。」


俺には小学6年生の妹がいる。

真顔で気持ち悪いと言われ、お兄ちゃん胸が苦しいよ……


「ドアを開く時はちゃんとノックしろよ〜」

「何回もしたよ。てかなんでスマホ抱きしめてんの?」

「な、なんでだろーな。あははは」

「もしかして好きな人できた!?ついにお兄ちゃんも恋をしたんだね。彩美あやみは嬉しくて泣きそうです。」


おい、何勝手に決めてんだ!

あってるけどよ!


「ご飯で呼びに来たんだろ?早くいこーぜ」

「否定しないって事はそうなんだね!おかーさ

むぐっ」


俺は慌てて彩美の口を防ぐ。

うちの親は子どものそういうのが大好きだ。

バレるといろいろめんどくさいことになる。


「今度欲しがってた漫画買うからさ、このことは兄ちゃんとの秘密にしよーぜ?」

「それなら秘密にしてあげる〜」


嬉しそうにリビングに向かっていった。

くっ、俺の500円が……


彩美は約束を守ってくれたらしく、親からの質問攻めからはのがれることができた……




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